泌尿器がん

1.主な臓器

泌尿器がん

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2.腎癌(腎細胞癌)

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腎臓は腰の高さの左右にひとつずつあり、120~130gほどのソラ豆型をした臓器です。腎臓の働きは、水分や老廃物を尿として排泄するほか、赤血球を増加させる物質や血圧を調節する物質、あるいはビタミンを活性化する物質などを作っています。
腎臓には良性腫瘍も悪性腫瘍もできますが、その多く(約9割)は悪性腫瘍で、いわゆる腎癌(腎細胞癌)です。男性は女性に比して2~3倍多くみられます。最近では、健康診断のおりに超音波検査やCTなどで、腫瘍がまだ小さい時期に発見される機会が増えてきています。

症状

腎癌は症状に乏しく、約7割の患者さんは無症状です。症状のある場合は、尿に血が混じる血尿や側腹部痛あるいは腹部の腫瘤などがみられます。
このうち最も多い症状は、無症候性血尿といって、排尿痛や頻尿などの症状を伴わず、単に尿に血が混るだけの症状です。したがって、健康診断の際に潜血や超音波検査などで見つかるケースが多くみられます。
時に、血液(凝血)が尿管につまって腰や背部が激しく痛んだり、転移がある場合にはその転移による症状でみつかることもあります。

検査

検査は腹部CT検査(コンピュータ断層撮影)、腹部超音波検査(エコー)などが行われますが、さらに排泄性腎盂造影(IVP・DIP)やMRI(磁気共鳴断層撮影)などの検査が行われることもあります。肺への転移を調べるためには、胸部X線写真や肺のCTの検査が行われます。

治療

腎癌は抗癌剤や放射線治療の効果があまり期待できないため、外科的切除術(腎摘除術)が基本になります。治療法は癌の進行程度によって異なりますが、一般的には癌が腎内に限局しており、転移がない場合は腎の摘出が行われます。
一方、転移を認める場合は種々の治療法を組み合わせた集学的治療が行われます。
手術は腎周囲の脂肪組織・副腎も含めて腎臓を取り除く根治的腎摘除術が基本です。また、

近ではお腹を大きく切ることなく、お腹に開けた小さな穴から腹腔鏡を入れて腎臓を摘出する、いわゆる内視鏡手術も積極的に進められています。内視鏡手術は侵襲が少なく、術後の回復も早い長所があります。
腎癌は体の免疫機構と関連を有しているため、インターフェロン(IFN)やインターロイキン2(IL-2)を用いた免疫療法も行われます。

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3.腎盂尿管癌

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腎臓で作られた尿は、腎盂と尿管を通って膀胱に達します。この腎盂や尿管の内面は膀胱と同じ移行上皮という粘膜で出来ています。このような腎盂や尿管の粘膜からできた癌を腎盂尿管癌(移行上皮癌)といいます。この癌は同じ種類の粘膜でできている膀胱へ広がりやすく(播種)、10~20%に膀胱癌の併発もみられます。

症状

最も多い症状は無症候性血尿(排尿痛や頻尿などの症状を伴わない肉眼的血尿)です。癌で尿管の内腔が狭くなった場合や凝血が尿管に詰まった場合などには、腎臓や尿管の内腔が拡張(水腎症・水尿管症)して、腰や背中の痛みを生ずることがあります。

検査

  • 尿検査:尿の顕微鏡検査で血尿の有無をみます。また、尿の中に癌細胞が含まれているかどうかをみる尿細胞診という検査も行われます。
  • 超音波検査(エコー)
    腹部の超音波検査で水腎症の有無をみることにより、尿管の通過障害の有無や程度が推測されます。
  • 膀胱鏡検査(内視鏡検査)
    膀胱の内部を直接観察して、膀胱にまで癌が広がっていないか検査します。
  • レントゲン検査
    造影剤を用いる排泄性腎盂造影(DIP)で、腎盂・腎杯・尿管の拡張や変形あるいは腫瘍の影をみます。さらに、尿管に細いカテーテルを挿入して、造影剤で尿路内腔を造影して(逆行性腎盂造影)病変の広がりをみるとともに、尿を採取して癌細胞の有無を調べることも行われます。
    尿道を経由して尿管へ直接細い器具(腎盂尿管ファイバー)を挿入して、尿管内部を観察したり、腫瘍の一部を採取する検査(生検)を行うこともあります。
  • その他
    胸部X線撮影、CT、MRIなどで、多臓器への広がりや転移の有無をみます。

治療

外科的治療が主体となります。この場合は、腎臓と尿管を摘出するだけでなく膀胱の一部も併せて切除します。
具体的な方法としては、腹部を大きく切開する方法(開放手術)とお腹に穴を開けて、内視鏡で切除する方法があります。
内視鏡による方法は傷が小さく術後の回復が早いという利点がありますので、当科でも積極的に進めています。
なお、片方の腎臓を摘出しても、もう一つの腎臓が正常であれば、腎不全にはならず、今までと全く同じ生活が出来るようになります。
癌がリンパ節や他の臓器に転移している場合は、一般的には手術は行わず抗癌剤を用いる化学療法などが行われます。

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4.膀胱癌

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膀胱の内面は移行上皮という粘膜で覆われており、この粘膜に発生する癌が膀胱癌です。60歳以上の高齢者に多く、男性が女性の3~5倍多くみられます。また喫煙者は非喫煙者の2~3倍多いといわれています。

症状

排尿痛や頻尿などの症状を伴わない無症候性の肉眼的血尿が多くみられます。膀胱炎や結石を合併していると、これに伴う排尿痛や頻尿などの症状も出現します。
一方、膀胱癌が進んだ状態になると、膀胱に多量の出血を起こして尿が出にくくなったり、まったく出なくなる、などの症状もみられます。
膀胱癌は一般的に症状が乏しいので、健康診断時の尿潜血でみつかるケースや膀胱の超音波検査でみつかるケースが少なくありません。

検査

尿の顕微鏡検査で血尿の有無をみるとともに、尿中の癌細胞の有無を尿細胞診という検査で調べることもあります。超音波検査も行われますが、超音波検査は痛みがなく大変有用な検査です。
膀胱の癌を直接観察するためには、膀胱鏡検査(内視鏡検査)が必須です。膀胱鏡検査は、尿道から膀胱鏡(カメラ)を挿入して、腫瘍の大きさや形を観察するほか、腫瘍の一部を採取することも出来ます(生検)。採取した腫瘍組織はその性状が詳しく調べられます。
このほか、造影剤を用いたレントゲン検査やCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの検査も必要に応じて行われます。

治療

膀胱癌には大きく分けて2つのタイプがあります。
その1つは、悪性度が比較的の低く、癌の根が浅い、表在性乳頭状癌といわれるタイプです。この場合はお腹を切らずに、尿道から内視鏡を挿入して、電気メスで癌組織を切除することができます(経尿道的膀胱腫瘍切除術)。
もう一つは、悪性度が高く、癌の根が膀胱壁の深いところまで浸潤している、いわゆる浸潤癌といわれるタイプやすでに他の部位に転移しているタイプです。このような場合は癌の進行程度に応じて、膀胱の摘出(膀胱全摘術)、抗癌剤あるいは放射線を用いた治療などが行われます。

1.内視鏡による治療(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

内視鏡による治療は侵襲が少なく、膀胱を摘出しないことが最大の長所です。しかし、半数以上に再発がみられますので、手術後も定期的(3~4ヶ月毎)に膀胱鏡検査を行って、再発した癌を早期に発見することが重要です。早期に発見できれば、再度、内視鏡的に腫瘍を切除することが出来ます。
再発を予防するために、経尿道的膀胱腫瘍切除術を行った後に、膀胱内に抗癌剤やBCG(ビーシージー)などを入れる場合もあります(膀胱内注入療法)。

2.膀胱全摘除術

悪性度が高く癌の根が膀胱の壁に深く浸潤している浸潤癌では、膀胱を前立腺や精嚢とともにすべて摘出する必要があります。これを膀胱全摘除術と言います。
この手術を行うと膀胱が摘出されるため、新たに尿の排泄路や尿を貯める袋を作る必要があります。これを尿路変向術といい、以下に示すようないくつかの方法があります。

3.尿路変向術
  1. 尿管皮膚瘻術
    腎臓から出ている尿管の下端をお腹の皮膚へ吻合して、そこから直接、尿が出るようにする方法です。したがって尿の出口部に蓄尿袋を付けることになります。一般的には左右の尿管ともお腹の右下に出口(ストーマ)を作ります。蓄尿袋はストーマを覆うように皮膚に貼付し、4~5日毎に自分で貼り替えます。
  2. 回腸導管造設術
    尿管を直接皮膚へ吻合するのではなく、尿管と皮膚の間に、腸の一部(回腸を15cm程遊離)を使って尿の通路(導管)を作る方法です。この場合も、尿の出口部に蓄尿袋を付けることになります。そして、4~5日毎に自分で貼り替えます。
  3. 自然排尿型代用膀胱形成術
    腸管(多くは回腸)の一部を利用して、膀胱のように袋状に形成後、今まであった膀胱の部位に吻合して、代用膀胱とする方法です。
    手術に長時間を要しますが、この方法ですと蓄尿袋を付けることなく、通常の方法で尿道から排尿できるようになり、これが最大の利点と言えます。
    しかし、癌が尿道に浸潤している場合、尿道の再発が危倶される場合、あるいは腸に病気があるような場合はできません。

以上のように色々な方法がありますが、当院では出来る限り通常の方法で尿道から排尿できる方法を行うようにしています。
しかし、病気の進行程度、年齢や合併症などによっても左右されますので、これらをよく調べたうえ、ご本人とよく相談して決めるようにしています。

4.抗癌剤投与による方法(化学療法)

癌の浸潤が進んでいる場合や転移がある場合、あるいは転移が強く疑われる場合には、抗癌剤で治療します。手術後に補助療法として抗癌剤を投与する場合もあります。また、膀胱癌の局所へ高濃度の抗癌剤を作用させるため、腫瘍の動脈内へ抗癌剤を投与する方法もあります。
抗癌剤の副作用としては、食欲不振、吐気、嘔吐、白血球減少、血小板減少、口内炎、貧血、脱毛などがみられます。

5.放射線療法

浸潤性の膀胱癌が対象になります。また転移した病変に対して行われることもあります。放射線は癌周囲の正常組織にも照射されるため、膀胱萎縮、腸や皮膚の障害が生じることがあります。

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5.前立腺癌

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前立腺は、栗の実の形をした男性だけにある臓器で、膀胱の下、直腸の前面に尿道を取り囲むように存在します。正常の大きさはおよそ20g程度で、加齢とともに肥大する傾向があります。
前立腺の働きは、精液の一部として前立腺液を分泌して、精液中にある精子に対する環境を整えています。

前立腺には、内腺(移行域)と、外腺(周辺域)と呼ばれる部分があり、癌は外腺から発生します。内腺が大きくなったものを前立腺肥大症と言います。
前立腺癌は、前立腺の一部が異常に増殖するもので、周囲の正常組織を破壊して広がる場合や、進行すると他の臓器にも転移します。原因ははっきりしていませんが、要因として、加齢に伴う男性ホルモンの変化や脂肪分の多い食事などが考えられています。また最近では遺伝的要素も指摘されています。

前立腺癌は、欧米では男性の悪性腫瘍中、もっとも多い腫瘍の1つです。日本でも動物性脂肪の摂取量増加や野菜類の摂取量低下など、食事の欧米化と社会の高齢化に相俟って増加しています。
一方、最近では前立腺癌に特異的で鋭敏なPSA(前立腺特異抗原)という血液検査が普及してきたため、早期に発見される機会も増えています。

症状

前立腺癌は、比較的ゆるやかに発育しますので、一般に初期には症状はみられません。腫瘍がある程度大きくなると、尿道を圧迫して排尿障害があらわれてきますが、前立腺肥大症も同様の症状を呈します。
さらに癌が進展するにつれて、会陰部の痛みや下肢の浮腫、血尿、あるいは前立腺癌が骨に転移すると骨の痛みなどを生ずることがあります。

検査

前立腺癌のスクリーニングとしてはPSAの血液検査が極めて有用です。さらに直腸診(肛門から指を入れて前立腺を直接触診する検査)や前立腺の超音波検査などが行われます。
PSAの値は癌以外の前立腺肥大症や前立腺の炎症でも高値を示すことがありますので、PSA値が異常値を示した場合は、前立腺針生検によって癌かどうかの確認が行われます。
これは肛門から超音波の器具を挿入して、前立腺を超音波で検査した後、前立腺組織の一部(8ヶ所)採取して、癌細胞の有無を詳しく調べる検査です。この検査で癌であることが確認された場合は、どの程度広がっているかなどを調べるため、腹部、骨盤部のCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)などの検査が行われます。
また前立腺癌は骨に転移しやすいので、骨の単純X線撮影や骨シンチグラムによって骨への転移も調べられます。

治療

治療法は癌の広がりや年齢によって異なります。
癌が前立腺の内部のみに留まっている早期の癌では、手術で前立腺を摘出する方法(根治的前立腺摘除術)が基本になります。
手術の場合は、手術侵襲の他に術後の尿失禁(尿がもれる)と勃起障害(インポテンス)が問題になりますが、最近ではこれらを軽減する努力が払われています。
一方、年齢が70~75歳以上の場合は手術によるメリットが少ないため、手術ではなくホルモン療法で治療するのが一般的です。

癌が前立腺の外にまで広がっている場合や、リンパ節あるいは骨などに移転している場合は、ホルモン療法や放射線治療が中心になります。
前立腺癌は男性ホルモンの作用で成長しますので、体内の男性ホルモン量を極力低下させることが、ホルモン療法の目的です。男性ホルモンは精巣(睾丸)で作られますが、この影響をなくすために、精巣を手術で摘出するか、あるいはLH-RHアゴニストといわれる薬を注射(1ヶ月に1回、あるいは3ヶ月に1回)します。
さらに、男性ホルモンの影響を最大限なくすために、男性ホルモンの作用を前立腺内で阻害する薬剤を同時に服用する方法が一般的に行われます(抗アンドロゲン療法)。
ホルモン療法にも男性ホルモン低下に伴う副作用がみられ、どの治療法が最も適切であるかは一概には決められませんので、よく相談のうえ治療法を選択します。

早期発見

前立腺癌にはPSAというすぐれた血液検査法があますので、癌を早期に発見できます。排尿障害のある場合はもとより、排尿障害がなくても、50歳を過ぎたら積極的にPSAや直腸診の検査を受ることが大切です。

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