肝がん

1.内科の立場から

概要

日本の肝癌のほとんどは、肝細胞から発生する肝細胞癌と呼ばれるものです。男子の癌による死亡数では、1位の胃癌、2位の肺癌に次いで第3位が肝細胞癌で、年々増加傾向にあります。
肝細胞癌の原因は、80%以上がC型肝炎ウイルス、10%がB型肝炎ウイルス、残りは原因不明となっています。C型慢性肝炎およびそれが進行したC型肝硬変においては高率に肝細胞癌が発生し、C型肝硬変では年率7%の患者さんに肝細胞癌が発生すると言われています。すなわち10年経過すると、10人中7人の患者さんに肝細胞癌が発生することになります。
通常癌の治療は外科的手術が中心となっていますが、肝細胞癌の場合は肝硬変が併存することが多く、手術後の再発が高率(およそ年率20%) であるため、むしろ肝機能が温存でき、体に対して侵襲の少ない内科的治療が中心となっています。
内科的治療では、小さな腫瘍においては外科的切除に匹敵する治療効果が得られるため、早期発見が非常に重要となってきます。

診断

肝細胞癌を早期に発見するためには、頻回の定期的検査が欠かせません。当科では、可能な限り肝エコー(3ヶ月ごと)とダイナミックMRI(6ヶ月ごと)を行い早期発見に努めており、最小6mmの肝細胞癌の発見が可能となっています。
エコーで小さな癌を発見するにはかなりの熟練を要し、当科では日本超音波医学会認定の専門医および検査士が検査にあたっています。
血液検査での腫瘍マーカーで発見できるのはかなりの進行癌であり、早期に発見できるのは残念ながらごく少数のかたに限られます。肝細胞癌の確定診断は、血管造影下のCTおよびエコーガイド下の針生検で行っています。

治療

肝細胞癌の内科的治療の中心は経皮的凝固療法(ラジオ波焼灼療法およびマイク波凝固療法)です。以前は経皮的エタノール注入療法が中心でしたが、治療効果が一定でないこと、比較的大きな腫瘍に対しては限界があること、治療期間が長くなること等の理由から、最近ではほとんど行っていません。
経皮的凝固療法の治療効果は優れており、当科での3cm、3個以下の患者さんの累積生存率は、1年100%、2年95%、3年95%となっています。(比較的新しい治療のため、長期生存に関してはま だ不明です。)
また進行癌で発見された患者さんに対しては、リザーバーと呼ばれる小さなタンクを左鎖骨の下の皮下に埋め込み、持続肝動脈注入化学療法を積極的に行っています。
現在のところ2年累積生存率は76%で、かなり良好な効果が得られています。その他、肝動脈塞栓術、放射線治療、肝移植など患者さんの状況にあわせて最適な治療法を提供できるよう努力しています。

再発予防

肝細胞癌はほとんどが肝炎ウイルスが原因であるため、治療を行っても高率に再発し最も大きな問題となっています。
再発予防に関して決定的な治療法はいまだ開発されていませんが、当科では種々の研究報告をもとに、インターフェロン、ビタミンK2等による再発予防を患者さんの同意のもとに積極的に行っています。

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2.外科の立場から

原発性肝癌の大部分はウイルス性(B型またはC型)肝炎の経過中に発生します。その治療にはラジオ波による焼灼療法や肝動脈動注療法などいろいろな治療法が挙げられます。
これらの中で手術療法は癌を取り除くには確実な方法と思われます。しかし、すべての病変が切除できるわけではなく、併存する肝硬変のため肝機能が低下して手術が困難な場合があり、腫瘍の部位や数、大きさと肝臓の機能のバランスに応じて治療法の選択することが重要です。当院では内科医と連携し、肝機能が良好で内科的治療が困難な患者さんには積極的に手術を行っています。

手術に際しては術前に自分の血液を採取して貯めておき輸血をおこなう自己血輸血をとりいれ同種血(他人の血液)輸血をできるだけ少なくする工夫をしています。
また大きな腫瘍に対しては手術の安全性を高めるためにPTPEという切除側の肝臓の血管を術前に閉塞させる手技を用いて、残存予定の肝臓の容積を増大させ切除をおこなっています。
当院で肝切除をおこなった患者さんの生存率は3年82.1%, 5年75.9%で、肝機能の良好な患者さんに対する肝切除術の成績は良好です。

しかし手術で腫瘍が完全に切除できても、ウイルス性肝炎が持続するため、術後に再び腫瘍ができる可能性があり、ウイルス性肝炎に対してインターフェロンの投与をおこなったり、超音波、MRIなどによる定期的な経過観察が必要で,ここでも肝臓内科医との連携が重要です。

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