頭頚部がん

頭頸部腫瘍の治療は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の分野であり、岐阜市民病院は岐阜県で数少ない頭頸部外科標榜科です。頭頸部腫瘍とは、耳、鼻、咽喉頭、口腔、頚部、顔面などにできる腫瘍です。これらの場所は顔面形態と人間の五感に関係した重要なはたらきがありますので、腫瘍により、或いは治療のための手術で形態や機能が障害されると生活の質に重大な支障がでますので注意が必要です。

▲ページの先頭へ

頭頸部腫瘍のTNM分類と病期分類

がんの進行状態はTNM分類と病期分類であらわします。
T分類とは、がんの原発部位の大きさ、進展の状態を示し、N分類は所属するリンパ節への転移の状態を示し、離れた他臓器への転移の状態を示すM分類の3つで、病期分類を決定します。

1)『口腔腫瘍』のT分類(頬粘膜、舌、口腔底など)

  • T1 最大径が2cm以下の腫瘍
  • T2 最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
  • T3 最大径が4cmをこえる腫瘍
  • T4 口唇 隣接組織、たとえば骨髄質、舌、頸部皮膚に浸潤する腫瘍

T1、T2で頸部に転移していないものは、局所の切除や放射線・化学療法を優先します。頸部に転移している場合は、舌の腫瘍と頸部に転移したリンパ節も切除する、舌腫瘍摘出および根治的頸部郭清術をめざします。この場合、切除された舌を大胸筋皮弁、遊離筋皮弁などで再建することが必要になります。再建手術後に嚥下や会話のリハビリテーションが必要です。

2)『上顎洞腫瘍』のT分類

  • T1 腫瘍が上顎洞粘膜に限局し、骨吸収も骨破壊も認めない
  • T2 腫瘍は硬口蓋および/または中鼻道を含む下部構造の骨吸収あるいは骨破壊を伴う
  • T3 腫瘍はつぎのいずれかに浸潤する:頬部の皮膚、上顎洞後壁、眼窩底または眼窩内壁、前篩骨洞
  • T4 腫瘍はつぎのいずれかに浸潤する:篩板、後篩骨洞あるいは蝶形骨洞、上咽頭、軟口蓋、翼口蓋窩、側頭窩、頭蓋底

上顎がんは、T1、T2で見つかる事は少なく、T3以上になって発見されることが一般的です。先ず浅側頭動脈チュービング、上顎試験開洞を行い、放射線・化学同時併用療法40Gy行います。或いは点滴での抗癌剤投与に続いて放射線照射40Gy行います。その後腫瘍の進展範囲に応じて根治手術を行い、必要があれば術後照射を行います。

3)『上咽頭腫瘍』のT分類(後上壁、側壁、下壁の3亜部位に細分される)

  • T1 上咽頭の1亜部位に限局する腫瘍
  • T2 上咽頭の1亜部位をこえて浸潤する腫瘍
  • T3 鼻腔および/または中咽頭に浸潤する腫瘍
  • T4 頭蓋および/または脳神経に浸潤する腫瘍

放射線・化学療法が原則です。上咽頭腫瘍は頸部リンパ節転移が起きてから発見されることが多く、浸出性中耳炎の原因になることもあります。また頸部転移に対しては、頸部郭清術を行うこともあります。
5年生存率は60%です。

4)『中咽頭腫瘍』のT分類 (中咽頭は前壁、側壁、後壁、上壁の亜部位に細分される)

  • T1 最大径が2cm以下の腫瘍
  • T2 最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
  • T3 最大径が4cmをこえる腫瘍
  • T4 隣接組織すなわち骨髄質、頸部軟部組織、舌深層(extrinsic)の筋肉に浸潤する腫瘍

中咽頭腫瘍の治療では、そしゃく、嚥下や音声機能を保存するために放射線・化学療法が中心です。病変が消失しない場合は腫瘍の切除を行うことがあります。頸部にリンパ節転移がある場合は、切除することもあります。5年生存率は、70%程度です。

5)『下咽頭腫瘍』のT分類(下咽頭は咽頭食道接合部(輪状後部)、梨状陥凹、 咽頭後壁の亜部位に細分される)

  • T1 下咽頭の1亜部位に限局する腫瘍
  • T2 片側喉頭の固定なく、下咽頭の1亜部位をこえる/または隣接する1部位に浸潤する腫瘍
  • T3 片側喉頭が固定し、下咽頭の1亜部位をこえる/または隣接する部位に浸潤する腫瘍
  • T4 隣接組織たとえば軟骨や頸部軟部組織に浸潤する腫瘍

下咽頭癌は頭頚部領域の中で予後不良の癌です。下咽頭腫瘍の治療では、嚥下や音声機能を保存するためにやはり放射線・化学療法を優先します。病変が消失しない場合は腫瘍の切除を行います。この際頸部転移があれば、原発巣と頸部リンパ節を切除します。この場合、切除した下咽頭の頸部食道の欠損は、小腸(空腸)を移植して形成します。全体の5年生存率は、33%です。

6)『喉頭腫瘍』のT分類(声門上、声門、声門下に細分される)

ここでは頻度の高い声門癌について示します。
* 声門

  • T1 声門運動正常で一側声帯に限局する腫瘍
    (前または後連合に達してもよい)
  • T1a 一側声帯に限局する腫瘍
  • T1b 両側声帯に及ぶ腫瘍
  • T2声門上部および/または声門下部に浸潤するものおよび/または声帯運動の制限を伴う腫瘍
  • T3 声帯が固定し喉頭内に限局する腫瘍
  • T4 甲状軟骨を破って浸潤するもの

喉頭腫瘍の治療では、音声機能を保存するために放射線/化学療法を優先します。T4に対しては、喉頭摘出術を施行しています。その後術後照射を行っています。 頚部転移例では頚部郭清術を行っています。
5年生存率は73%です。

7)『唾液腺腫瘍』のT分類(耳下線、額下腺、舌下腺)

  • T1 最大径が2cm以下の腫瘍
  • T2 最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
  • T3 最大径が4cmをこえる腫瘍
  • T4 最大径が6cmをこえる腫瘍

▲ページの先頭へ

当科での治療方針

唾液腺腫瘍の治療では、小さい物は周辺組織をつけて切除します。顔面神経は、腫瘍の悪性度が高く剥離保存できない場合は切除します。腫瘍の悪性度が低い場合は保存します。この際頸部転移があれば、原発巣と頸部リンパ節を切除します。悪性度が高く進行した場合は、手術後に放射線療法や化学療法を追加することがあります。5年生存率は80%です。

『甲状腺腫瘍』のUICCによるT分類

  • TX 原発腫瘍の評価が不可能
  • T0 原発腫瘍を認めない
  • T1 甲状腺に限局し最大径が1cm以下の腫瘍
  • T2 甲状腺に限局し最大径が1cmをこえ4cm以下の腫瘍
  • T3 甲状腺に限局し最大径が4cmをこえる腫瘍
  • T4 最大径が6cmをこえる腫瘍

甲状腺癌の中でも大多数を占める乳頭癌、濾胞癌は、頭頚部癌の中でも最も予後が良好です。甲状腺腫瘍の治療では、小さい物は甲状腺の半分を、大きい場合は甲状腺を全て切除します。反回神経はできるだけ保存しますが、腫瘍から剥離保存できない場合は切除します。この際に頸部リンパ節に転移があれば、原発巣と頸部リンパ節を切除します。反回神経切除による音声や呼吸の障害に対しては機能を回復する手術を行うこともあります。腫瘍の悪性度が高く進行した場合は、手術後に放射線療法を追加することがあります。当科における全体の5年生存率は90%です。

▲ページの先頭へ


ページの先頭へ