産婦人科 子宮脱(膀胱瘤、直腸瘤)に対する内視鏡下手術治療

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子宮脱(膀胱瘤、直腸瘤)に対する内視鏡下手術治療

子宮脱(膀胱瘤、直腸瘤)に対するロボット支援下仙骨膣固定術

仙骨膣固定術は膣壁をメッシュ(医療用の網目素材)で仙骨(おしりの骨)に吊り上げ固定する術式です。この歴史は古く、1957年にフランスでメッシュではなく生体筋膜を使用した開腹手術が最初です。1971年よりメッシュが使用されるようになり、1994年にはアメリカで最初の腹腔鏡下手術が行われました。以前はY字型メッシュで主に膣尖部を吊り上げる術式が一般的でしたが、2004年にフランスでダブルメッシュ(腟管の前後に2枚のメッシュを留置する術式)が考案され、日本でも2008年に日本医科大学で導入され、2012年に先進医療、2016年に保険診療が認められました。その後、腟管の後にはメッシュを入れずに縫い縮める術式が主流になっています。さらに2020年4月からロボット支援下手術が保険診療で認められ,全国的に普及しつつあり、現在子宮脱(膀胱瘤、直腸瘤)の最終的な術式になっていると思います。手術侵襲(患者様の負担)が少ないことと再発率が少ないことが利点です。また腹腔鏡下手術に比べ,肥満の方にも対応可能であり、手振れがない、3D立体視、多関節鉗子による骨盤の深いところでの操作性の向上により、より安全で安定した手術が可能です。もちろん合併症(膀胱や尿管や直腸の損傷、血腫、創部感染症(ばい菌が入り熱が出る)、尿失禁(お小水がもれる)、尿閉(お小水が出し にくい)、メッシュびらん(後になって膣壁等からメッシュが出てくる)等)の危険性はゼロにはなりませんが、従来手術(膣壁を縫い縮める手術で子宮摘出を追加することもあります。)、TVM手術(膣式のメッシュ手術)、腹腔鏡下仙骨膣固定術より危険という訳ではなく、事実上安全に施行できる術式です。欠点としては手術時間が長く3-4時間ぐらいかかることです。入院期間は7日間(手術後5日目の退院)ぐらいです。

メッシュの装着図

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イラストは日本医科大学の市川雅男先生のご厚意により引用させていただきました。(一部改変しております。)

子宮脱に対する膣式腹腔鏡下手術

最近、膣式の腹腔鏡器具が開発され、日本でも2020年から施行されています。2022年4月から腹腔鏡下膣断端挙上術が保険診療で認められ,当科でも2022年5月より開始しました。対象は膀胱瘤や直腸瘤のない子宮脱のみの方です。子宮を摘出した後に一番奥の腟壁を子宮を仙骨側に吊り上げている仙骨子宮靭帯に縫い付けて腟壁を挙上する手術です。挙上手術をしないと膣壁が外に出てくる膣脱という病気が後で発症する確率が高くなります。以前はこれを膣式手術で施行していましたが、骨盤腔が奥の方にあるため安全に仙骨子宮靭帯に縫合することが困難でした。その後腹腔鏡下で施行することで安全な手術が可能になりました。そして現在さらに進化し膣式の腹腔鏡下手術が可能になりました。最大の利点は通常の腹腔鏡下手術と違ってお腹に傷がないため術後の痛みが少なく術後の回復が早い点です。しかも従来の膣式手術より腹腔鏡下に見ながら骨盤内操作ができるので非常に安全性の高い手術と言えます。但し予想に反する癒着があると通常の腹腔鏡下手術に切り替わる事もありますが、それによるデメリットは開腹手術に比べれば非常に軽微と言えます。入院期間は7日間(手術後5日目の退院)ぐらいです。

膣式腹腔鏡下子宮全摘術/膣断端挙上術
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膣式の腹腔鏡器具
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