平成25年度 第10回公開講座の様子

平成25年度第10回岐阜市民病院公開講座実績

平成25年度第10回岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成26年1月18日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
あたらしい放射線治療 ~身体にやさしく病巣には強力に!!~
岐阜市民病院放射線治療部長 飯田 高嘉

新規導入の高精度放射線治療装置(ノバリスTx)でできること
岐阜市民病院放射線治療専門放射線技師  渡邊 隆

放射線治療 ~がんと診断されてから治療終了まで~
岐阜市民病院がん放射線療法看護認定看護師 竹中三奈子
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挨拶をする
澤祥幸診療局長

平成26年1月18日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、 平成25年度第10回岐阜市民病院公開講座を開催しました。
最初に、「あたらしい放射線治療~身体にやさしく病巣には強力に!!~」と題して、岐阜市民病院放射線治療部長 飯田高嘉から、次に「新規導入の高精度放射線治療装置(ノバリスTx)でできること」と題して、岐阜市民病院放射線治療専門放射線技師 渡邊隆から、最後に「放射線治療 ~がんと診断されてから治療終了まで~」と題して、岐阜市民病院がん放射線療法看護認定看護師 竹中三奈子からの講演を開催しました。
(講演内容については、要約を掲載
当日は、170 人の多数の市民にお集まりいただきました。わかりやすい説明があり、講演終了後にはたくさんの質問が寄せられ、盛況のうちに公開講座を終了しました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。
次回は、平成26年2月22日(土)に、「心の病の治療について」~心の余裕という視点から~と題して、岐阜市民病院精神科部長 本間博行から、次に「新型うつ病とは何か」と題して、岐阜市民病院精神科ディケアセンタ-長 柴田 明彦から、最後に「ディケア活動について」題して、岐阜市民病院精神科医員 櫻庭泰からの講演を予定していますで、次回も出席くださるようお願いします。

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講演をする
飯田高嘉 放射線治療部長
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講演をする
渡邊隆放射線治療専門放射線技師
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講演をする
竹中三奈子がん放射線療法看護認定看護師

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講演要約

あたらしい放射線治療~身体にやさしく病巣には強力に!!~
岐阜市民病院放射線治療部長 飯田高嘉

1.放射線ってなに?

放射線とは鉄とかコンクリ―トなどの無機物にはまったく影響のない熱量でも、生物はDNAといった非常に繊細な分子を遺伝子に持つためにわずかな量でも影響が大きく、そのため何も熱く感じないのにダメージを受けているといったことが起きるのです。

2.放射線治療について

放射線治療とは、放射線をがんに照射して、がん細胞の遺伝子を変化させ、がん細胞を殺す治療です。
手術、化学療法(抗がん剤治療)と並んで、がん治療ではよく行われる治療方法です。手術をすれば傷跡が残り、身体の形や機能が損なわれるような場合でも、放射線療法では切らずにがんを治療することが可能です。また、体への負担が少ないので御高齢の方、合併症があって手術が受けられない方でも治療できることが多いのです。

3.前立腺がんといわれたら‥

前立腺がんの場合、IMRT(強度変調放射線治療)を用いた放射線治療ならば手術と同じ治療成績が得られ、また仕事をしながら通院での治療も可能なことや、男性機能の障害や尿失禁の可能性も手術より低いといわれています。

4.IMRTってなに?

強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)とは、最新のテクノロジーを用いて照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて照射を行なう方法のことです。IMRTを使えば、がんの形に凹凸があってもその形に合わせた線量分布が作ることができます。

5.実際の診療について

放射線腫瘍医(放射線治療医)が診察により病気の進行度や治療を受けられる方の体の状態を把握した上で、放射線治療が可能か否か、どの様な照射(放射線を体にあてること)方法が適切か、などを判断します。
通常、月~金の連日、1日1回の照射を行います。1回に要する時間は10分前後であり、日常生活にも大きな制限はありません。このため、放射線治療のみを行う場合、通院治療が可能です。合計で何回の照射を行うかは、病気や治療を受けられる方の状態により様々ですが、一般には2週間~2ヶ月程度の治療期間を要します。

6.よくある質問

放射線治療を受けると髪が抜けるのではないかというご質問を受けますが、頸部・胸腹部・骨盤・四肢にだけ放射線治療を受け頭部には受けていないような場合には、髪の毛が抜けることはありません。

7.放射線治療の今後の展望

今後、がん患者の増加が予想され、それにつれて放射線治療が施行される機会がさらに増えるものと予想されます。

新規導入のノバリスTxでできること
中央放射線部 放射線治療専門放射線技師 渡邊 隆

平成26年4月より当院では、新しいリニアックのノバリスティーエックスの稼働を開始します。この装置で、新たに、画像誘導放射線治療、呼吸同期照射、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線照射が出来るようになりますのでそれを紹介します。

1.画像誘導放射線治療

照射直前に,治療装置本体でX線画像を撮影し、患者さんの位置を補正して照射するシステムのことをいいます。治療室内で照射直前に撮影したX線画像と、治療計画時に撮影した画像とを重ね合わせて位置を補正します。精度は1㎜単位での修正が可能です。画像誘導放射線治療を用いることで、治療中の患者さんの動きにも対応でき、病巣への放射線集中性を高めることができます。

2.呼吸同期照射

照射に適した特定の呼吸タイミングでのみ、放射線が照射されます。呼吸で動く範囲を含めた照射よりも、より限局した場所に照射することができるため、正常組織のダメージを少なくでき、副作用の軽減につながります。

3.強度変調放射線治療(IMRT)

通常の照射は、同じ方向から照射される放射線量は照射野内ではすべて均一です。IMRTは放射線を当てている最中に照射野の形を変化させることで、当てる放射線量を不均一にします。放射線の強さを変えるのではなく、当てる量を変えることで強弱をつける照射法です。それぞれの方向からの当てる量を変えることで、線量分布図を思い通りの形にすることができます。通常の放射線治療では、腫瘍と正常組織が複雑に近接する場合、腫瘍だけに充分照射することはできませんでした。IMRTを行うことで、腫瘍に凹凸があってもその形に合わせた線量分布を作ることができます。 腫瘍には充分な放射線を照射でき、腫瘍周囲の正常組織への被ばくを少なくできる照射法です。

4.定位放射線照射

病巣に対し多方向から放射線を集中させる照射方法です。X線を3次元的に色々な方向から照射することで、周囲の正常組織に対する被ばくを極力抑えられることができます。手術が困難な場所にある腫瘍に対しても治療可能です。ただし、一度に大量の放射線を当てますので、照射野をあまり大きくできないため、小さい腫瘍に限られます。脳定位放射線照射と体幹部定位放射線照射があります。

以上が、新たに当院で出来るようになる放射線治療です。放射線治療では、腫瘍のみに放射線を当てるのが理想ですが、外照射では不可能です。いかに正常組織の被ばくを少なくして、腫瘍に多く放射線を当てられるかが重要になります。高精度放射線治療は、従来よりも放射線を腫瘍に集中させ腫瘍への照射線量を増やすことにより、治る確率を向上させることができます。腫瘍のまわりにある正常組織への被ばくを減らすことによって、放射線による障害を少なくする治療です。

放射線治療~がんと診断されてから治療終了まで
がん放射線療法看護認定看護師 竹中三奈子

放射線治療は手術や抗がん剤治療と比べて認知度が低く、どのような治療が行われるのか想像がつかないと思います。そこで放射線治療について理解を深めてもらうため、1)がんと診断された時の心理的影響について 2)放射線治療の流れについて 3)放射線治療の副作用についての説明を行いました。

1.がんと診断された時の心理的影響について

がんと告知されたことにより衝撃を受け何も考えられない状態となり、2~3日はがんという事実を否認したり、絶望や怒りを感じたりと様々な反応を示します。その後不安から不眠や食欲低下、集中力の低下、抑うつ状態になることがあります。しかし1~2週間で不安も軽減し、徐々にがんという事実を受け入れていくことができるという心理経過をたどります。

2.放射線治療の流れについて

放射線治療は(1)放射線科受診→(2)治療計画用CT撮影→(3)放射線治療開始・日々の治療→放射線治療終了→(4)各科外来にて経過観察という流れになっています。

  1. 放射線科受診時は、放射線治療医より病状の説明と放射線治療についての説明を受けます。その後看護師から放射線治療のオリエンテーションを受けます。
  2. 治療計画用CT撮影は、普段撮影しているCTとは目的が異なり、腫瘍に放射線を照射するために放射線の量や当てる方向を決定するためのものです。
  3. 放射線治療は予定された回数を1日1回、土・日・祝日を除く平日に行います。
  4. 放射線治療終了後は各科外来において経過観察を行います。放射線治療効果の出現には時間がかかる・治療終了後に副作用がでることがある・がんには再発のリスクがあるため、変化を見逃さないためにも定期的に外来診察を受けることが必要です。
3.放射線治療の副作用について

副作用は治療中に起こるものと、治療終了後に起こるものがあります。
治療中に起こる副作用として皮膚炎・粘膜炎などがあり、治療開始10回目頃より出現します。治療回数を重ねることにより症状は強くなりますが、治療終了後徐々に回復してきます。
治療終了後に起こる副作用としては放射線肺炎などがありますが、必ず起こる副作用ではありません。しかし発症した場合、回復が難しいといわれているため、出現しないよう治療計画を立て治療を行います。
毎回の治療時に症状の確認を行い、副作用の悪化を防ぎ安定した日常生活が送れるよう支援しています。さらに苦痛の緩和を図り予定された治療が終了できるよう支援しています。


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