平成27年度 第4回市民公開講座の様子

平成27年度 第4回岐阜市民病院公開講座実績

平成27年度第4回(通算55回)岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成27年7月18日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容

がん診療における病理医の役割
岐阜市民病院 病理診断科部長(特別診療顧問) 田中卓二

市民病院でできる検査
岐阜市民病院中央検査部長 内木隆文

平成27年7月18日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成27年度第4回(通算55回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
「がん診療における病理医の役割」と題して、岐阜市民病院病理診断科部長(特別診療顧問)田中卓二から、次に「市民病院でできる検査」と題して、岐阜市民病院中央検査部長内木隆文からの講演を開催しました。
当日は、100人と多くの市民の皆様にお集まりいただきありがとうございました。皆様にわかりやすい説明で活発な質疑応答もあり、公開講座も盛況のうちに終了しました。寄せられた感想には、非常にわかりやすく大変参考になった等の意見もありました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。
(講演内容については、要約を掲載

なお、次回の第5回(通算56回)は、8月22日(土)に、「腰の痛み・神経痛と、その手術治療」と題して、岐阜市民病院整形外科部長・脊椎センター副センター長宮本 敬、次に、「股関節の痛みと、その手術治療」と題して、岐阜市民病院人工関節センター長大塚博巳から、最後に、「膝関節の痛みと、その手術治療」と題して、岐阜市民病院整形外科副部長・人工関節センター副センター長 森敦幸からの講演を予定していますので、次回も出席くださるようお願いします。

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挨拶をする
診療局長 上田宣夫
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講演をする
病理診断科部長(特別診療顧問) 田中卓二
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講演をする
中央検査部長 内木隆文
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質疑応答に答える
講演者
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公開講座全景

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講演要約

「がん診療における病理医の役割」
岐阜市民病院病理診断科部長(特別診療顧問)田中卓二

本公開講座では、「がん診療における病理医の役割」と題して、以下の項目についてお話しました。
(1)病理医とは何?何をやってるの?
(2)腫瘍とは?「がん」と「癌」の区別はあるの?
(3)がん診療における病理医の役割
(4)顕微鏡でみたがん細胞、がん組織
(5)病理診断をがん治療にどう役立てるか
(6)岐阜市民病院病理診断科の紹介

医療には大きく分けて「予防」、「診断」、「治療」の3分野がありますが、その「診断」に従事し、専ら顕微鏡を用いた形態学による「診断」を行っている医師が「病理医」です。一般の方には聞きなれない「病理医」は臨床医のサポート役でもあります。
腫瘍とは、正常と異なり、一方的に増殖する進行性病変で、あらゆる細胞から発生し、「新生物」とも呼ばれます。言い換えれば、身体を構成する細胞が、生物学的性状の異なった異常細胞 に変化して、自立性を持って、無目的かつ過剰に増殖したものです。

腫瘍には、原則として発生部位に留まり、増殖速度は遅く、基本的に生命を奪う力のない「良性腫瘍」と発生臓器(原発巣)に留まらず、周囲組織へ連続性に拡がり(浸潤)、遠隔臓器に達して増殖し(転移)、生命を奪う力のある「悪性腫瘍」の二つがあります。顕微鏡下で「病理医」が腫瘍と診断するには細胞異型や構造異型、即ち正常細胞や正常構造とどれほどかけ離れているかを指標に判断します。
さて、「がん」と「癌」の区別です。先ほど腫瘍には「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の二つがあると述べましたが、発生母細胞を考えるとそれぞれに上皮性由来、非上皮性由来のものがあります。上皮性悪性腫瘍を「癌」、非上皮性悪性腫瘍を「肉腫」と称し、両者を総称して「がん」と呼びます。

顕微鏡でみたがん細胞、がん組織を紹介します。癌細胞の特徴的な形態で名前を付けています。代表例が腹水中や胃癌としてみられた印鑑細胞です。皮膚の表皮内に増殖する扁平上皮癌(ボーエン病)、肝細胞癌、肺扁平上皮癌です。いずれも正常細胞や正常組織と比べてかけ離れた形や構造を示し、異型度が高いことが解ります。
病理診断をがん治療にどう役立てているかについてですが、生検診断、術中迅速診断、手術材料の病理診断、放射線治療や化学療法の治療効果判定を行っております。最近では、がん細胞にだけ存在する特徴的な部分(標的分子)のみを攻撃し、副作用が少なく、高い治療効果が期待できる分子標的治療が盛んになっています。当病理診断科部では乳癌、肺・胃・大腸癌組織でHER2、EGFR、ALKなどの標的分子の有無を免疫染色にて、より効果的な分子標的治療薬の選択を行っています。
当病理診断科部は専任病理医2名(非常勤病理医6名)、臨床・衛生検査技師5名(内 細胞検査士CT4名)のスタッフで、日本病理学会認定施設、病理専門医研修認定施設、日本臨床細胞学会認定施設、日本臨床細胞学会認定教育施設として岐阜市民病院における高度医療を支えております。

リウマチ膠原病という名前は1942年に内科学の教科書を最初に執筆したKlempererがリウマチ熱、関節リウマチ,全身性エリテマトーデスなどの6疾患を膠原病という名称を提唱した。即ち、膠原線維の変性が主たる病態であるとした。しかし、最近では血管炎、IgG4関連疾患など新たな疾患も加わり、リウマチ性疾患という名前で呼ばれる。欧米の教科書で膠原病という名称は見かけなくなっている。日本では社会的にも膠原病という名前が浸透しているので、使用されています。

リウマチ膠原病のなかで最も頻度が高いのが関節リウマチです。語源は医学の父ヒポクラテスが体の各部へ粘液が流れだし、関節に貯まって痛みを引き起こす事よりギリシア語の流れ(rhuema)に由来する。病態は細菌、ウイルス感染、喫煙などの環境因子や遺伝子(体質)が引き起こす免疫異常により、骨、軟骨、血管、内蔵に炎症を引き起こす病気です。その中で最も頻度が高いのが関節リウマチです。日本の患者数は約70万人であり、女性が男性の4倍多い。働き盛りの40歳代にそのピークがあり、社会生活に支障を来します。

関節リウマチは、関節に痛みや腫れを起こす病気で、手足のみならず全身のどの関節も侵す可能性があります。適切な治療を受けないと、侵された関節は破壊され、関節としての機能が低下します。また、関節以外の内臓などにも障害が起きることがあり、時には生命にもかかわる場合があります。

関節リウマチは自己免疫疾患の1つで、本来身を守るべき免疫が、何らかのきっかけから自分の体を攻撃してしまう。治療法の進歩により、進行をかなり食い止めることは可能になってきました。症状は、多くの場合手や足の関節から始まるが、特に、指の第2関節や指のつけ根の関節に、症状が現れることが多いが、指の第1関節が侵されることは稀です。関節のみならず、他の臓器にも現れることがあります。だるさや発熱、食欲不振、体重の減少、貧血、皮下結節(リウマトイド結節)ができる場合があります。間質性肺炎、心膜炎、動脈炎、神経炎、筋炎なども発症する事があります。

治療法は最近、飛躍的に進歩しています。当初は、痛みをとるNSAIDs(解熱鎮痛薬)が関節リウマチの治療であったが、抗リウマチ薬の登場により効果は弱いながらも関節の疾患活動性を抑え、関節破壊を緩やかに遅延させることが可能となりました。更に、関節リウマチの治療の主流といえる生物学的製剤の登場により、強力な疾患活動性の抑制や、完全な関節破壊の進展抑制が可能となってきました。

特に、10年前に登場した生物学的製剤は強力にTNFαというサイトカインを抑え、臨床的寛解、更には抗リウマチ薬も含めて全ての薬剤が休薬できる可能性にまで到達しています。これに加えてIL6というサイトカインの働きを阻害する薬や、リンパ球のサイトカイン産生のシグナルを押さえる注射薬や、各種サイトカインの作用を特異的に押さえる飲み薬まで開発されています。今や、国内外における関節リウマチ治療のエビデンスは多数確立され、「関節リウマチが治癒する」という関節リウマチ治療の新しい未来を切り開く可能性にまで来ています。

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「市民病院でできる検査」
岐阜市民病院中央検査部長内木隆文

岐阜市民病院は現在病床数609床あり、80万人の岐阜医療圏の中核病院であります。
入院患者はのべ20万人、年間手術件数は年間4500件にも上り、そのため検査部の役目も益々大きくなっていると言えます。

中央検査部は生化学・免疫検査、血液学的検査、生理検査、細菌・感染症検査、一般検査(尿・便)、病理検査に分かれており、それぞれのチームが様々なタイミングで当院の診断・治療を支えています。1例を挙げると、当院では岐阜県で最も急性白血病を診る施設でありますが、患者さんが入院するにあたり、これから始まる抗がん剤の治療に耐え得るかどうか、心臓などの働きを調べる生理検査や、白血病の診断を下す血液学的検査および病理検査。また化学療法や骨髄移植などで発生する高度免疫不全状態を乗り切るための輸血や、感染症の監視などを行っています。また全治療経過を通じ生化学検査などで全身状態を把握することとなります。

また、当院は肝細胞癌の治療とりわけラジオ波焼灼療法においては症例も多く全国的にも有名な施設であります。肝細胞癌の原因はウイルス肝炎特にC型、B型肝炎でありますが、これらの診断のためには免疫・血清検査が必須で、当院でも多くの患者さんに治療目的もしくは手術前の検査として測定されています。また肝癌治療後の患者さんには治療後の再発のチェックとして腫瘍マーカーなどを定期的に測定しています。当院ではこれらの検査はすべて院内で可能であり、30分ほどで検査結果が出るシステムとなっており、また患者さんの利便性向上のためにもレポートを工夫して提供するようにしています。

当院では残念ながら話題となるようなスゴイ検査は出来ません!が、必要なすべての検査が出来るシステムが整っており、医療者にも患者さんにも安心して医療を受けられるような体制を作っております。


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