平成25年度 第11回公開講座の様子

平成25年度第11回岐阜市民病院公開講座実績

平成25年度第11回岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成26年2月22日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
「心の病の治療について」~心の余裕という視点から~
岐阜市民病院精神科部長 本間 博行

「新型うつ病」とは何か
岐阜市民病院精神科ディケアセンター長  柴田明彦

「ディケア活動について」
岐阜市民病院精神科医員 櫻庭 泰
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挨拶をする
里見和夫診療局長及び講演者

平成26年2月22日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成25年度第11回岐阜市民病院公開講座を開催しました。
最初に、「心の病の治療について」~心の余裕という視点から~と題して、本間博行 精神科部長
次に、「新型うつ病とは何か」と題して、柴田明彦 精神科ディケアセンタ-長、最後に「ディケア活動について」と題して、櫻庭 泰 精神科医員からの講演を開催しました。
(講演内容については、要約を掲載
当日は、190 人の多数の市民にお集まりいただきました。身近な話題でもあり、参加された方も熱心に耳を傾けておられ、講演終了後にはたくさんの質問が寄せられ、盛況のうちに公開講座を終了しました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。
なお、次回は、4月19日(土)に、「元気で長生きするために~ロコモティブシンドロ-ムの予防~」と題して、岐阜市民病院整形外科脊椎センタ-長(特別診療顧問)清水克時からの講演を予定していますので、次回もぜひ出席くださるようお願いします。

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講演をする
本間博行精神科部長
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講演をする
柴田明彦精神科ディケアセンター長
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講演をする
櫻庭 泰精神科医員

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講演要約

「心の病の治療について」~心の余裕という視点から~
岐阜市民病院 精神科部長 本間 博行

1.心の余裕をはかることの意義

心の病の治療において患者さんの心の余裕のなさの程度をはかることは大切なことです。余裕のなさの程度が強くなると、自分で余裕のなさがどの位なのかわからなくなります。
このために治療のなかで、自分の心の余裕の程度をはかれるようにしていくことが大切になります。
患者さんの心の余裕のなさ程度が治療の内容や方法を判断するバロメーターとなります。例えば薬の種類や量などの判断や通院治療か入院治療かの選択などの基準になります。また、日常生活のペースや仕事など現実との関わり方を調整するバロメーターになります。

2.心の病とは

心の病は自分の役割や課題、人間関係など周囲の世界との関わりがうまくいかなくなった状況で生じる心の状態です。
つまり、心の余裕のなさの程度が強くなった状態が心の病と呼ばれる状態です。
心の余裕のなさは、次のようなものとして表現されます。例えば、仕事など役割や人間関係について悩みすぎている。対人的な関わりに不安や緊張を強めてしまう。不眠や身体症状、幻覚や妄想などを認め、症状に対して精神的な距離がとれないなどです。

3.心の余裕のなさが生じやすいあり方

心の余裕のなさが生じる理由としては、例えば完璧主義的な人にみられるように「かくあるべき(かくありたい)自分」と「現在の自分」との間に無意識的なギャップが大きく生じてしまうことがあります。このために「現在の自分」を受け入れることができなくなり、強い不安が生じてしまいます。なぜ自分の心の余裕がなくなっているか、自分のあり方について知ることは大切なことです。

4.治療について

心の余裕が乏しくなっていることを自分が自覚して、心の余裕を回復することをまず治療の目標とします。このために薬や休息だけではなく、家族や職場など周囲の人の理解も大切です。余裕が回復して現実的な世界と関わる段階になったら、自分の余裕の程度をはかるようにして無理が生じないように調整していくことが大切です

「新型うつ病」とは何か
岐阜市民病院 精神科ディケアセンター長  柴田明彦

平成12年頃から、新型うつ病と呼ばれる疾患が急速に増えてきました。この新型うつ病の実態は何か、そして新型うつ病にはどのように対処したらいいのかについて、簡単にお話したいと思います。
新型うつ病は、正式には非定型うつ病といい、うつ病の3~4割を占めると言われています。従来のうつ病に比べて、

  • 青年層に多く、自分の好きなことはできるが、嫌なことはできない。
  • 仕事のある日は調子が悪いが、休日には元気になる。
  • 自分がうつ病であることを隠さず、自ら診断書を求める。
  • 著しい体重増加、または過食がみられることがある。
  • 過眠が認められ、さらに日中にも眠いことがある。
  • 気分が落ち込むと、手足に鉛が詰まったように重くなって動けなくなる。
  • 批判や否定に対して過敏になり、容易に傷ついて引きこもる。
  • 気分の波が激しく、感情のコントロールが効かない。
  • 休息と服薬のみでは改善せず、うつ状態が慢性化することある。

といった特徴があります。
ところで、新型うつ病が増加している現象の背景には、次の二つの問題点が指摘されています。
一つは診断の問題です。新型うつ病は、現在主流になりつつある操作的診断基準によって診断されます。操作的診断基準とは、簡単に言えば病気の症状が羅列してあって、その中の幾つ以上を満たせばその疾患と診断できるとするものです。誰でも簡単に診断ができるという利点がある反面、診断が正確でなく、広い範囲の病態を新型うつ病と診断してしまう危険性があります。
もう一つは処方薬の問題です。日本で平成11年にSSRIという副作用が少ない抗うつ剤が販売され、翌年から新型うつ病が年々増加しているという現象が起こっています。これは、安易なうつ病の診断と安易な投薬が広まった結果と捉えることができるのかも知れません。
実は新型うつ病は、これまで抑うつ神経症と診断されてきた病態とよく似ているのです。われわれは流行に流されることなく、もう一度新型うつ病について考えてみる必要があると思います。現在当院では、新型うつ病は抑うつ神経症として捉え、

  • 安易に休職を勧めない。
  • 依存的な態度に対しては、少し離れて見守るように接する。
  • 規則正しい生活を送るなかで、好きなことを積極的に行ってもらう。
  • 復職の過程では、失敗ではなく、小さな成功体験に目を向けるように接する。

といった対応を行うように心がけています。


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