平成26年度 第9回公開講座の様子

平成26年度 第9回岐阜市民病院公開講座実績

平成26年度第9回岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成27年1月31日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
1.「 乳癌検診、受けたほうがいいの?」
岐阜市民病院 乳腺外科部長  中田 琢巳

2.「子宮内膜症のお話」
岐阜市民病院 産婦人科部長  山本 和重

3.「妊娠と感染症のお話」
岐阜市民病院 産婦人科副部長  平工 由香

4.当院における在宅医療推進の取り組み」
岐阜市民病院 副院長  杉山 保幸

平成26年度第9回(通算49回)岐阜市民病院公開講座を開催しました
平成27年1月31日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成26年度第9回(通算49回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
最初に「 乳癌検診、受けたほうがいいの?」と題して、岐阜市民病院乳腺外科部長中田琢巳から、次に、「子宮内膜症のお話」と題して、岐阜市民病院産婦人科部長山本和重から、次に、「妊娠と感染症のお話」と題して、岐阜市民病院産婦人科副部長平工由香から、最後に、「当院における在宅医療推進の取り組み」と題して、岐阜市民病院副院長杉山保幸からの、講演を開催しました。
当日は、120人と多くの市民にお集まりいただきありがとうございました。参加された方々も身近な問題で、熱心に聞き入っておられ、質疑応答もあり、盛況のうちに公開講座を終了しました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。(講演内容については、要約を掲載

なお、次回は、2月7日(土)に新たな国民病「慢性腎臓病(CKD)とは?」と題して、腎臓内科部長高橋浩毅、もしかして腎臓も・・・? 慢性腎臓病と糖尿病性腎症と題して、腎臓内科部医長木村行宏、腎臓病の食事のポイントと題して、管理栄養士塚原可奈子からの講演を予定しておりますので、次回も出席くださるようお願いします。

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挨拶をする
杉山保幸 副院長及び講演者
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講演をする
中田琢巳 乳腺外科部長
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講演をする
山本和重 産婦人科部長
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講演をする
平工由香 産婦人科副部長
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質疑応答に答える
講演者

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講演要約

乳癌検診、受けたほうがいいの?
岐阜市民病院乳腺外科部長 中田 琢巳

【乳がんの発生と疫学について】
現在、日本では1年間におよそ76000人ほどの方が新たに乳癌に罹患されています。また、この数は年々増加傾向にあり、部位別では女性に最も多いがんとなっています。
特に40~50歳代の働き盛りの方ががんでなくなる原因の最も多いものとなっています。
【検診の時に行われる検査について】
乳癌を見つける手段として使われるのがマンモグラフィーで乳房をできるだけ平らにしてレントゲン撮影するものです。
さわることのできないような小さな乳癌も発見することができ、特に石灰化のある乳癌の発見が得意です。検査の感度(がんのある人を正しく診断できる精度)は、80~90%とされています。ただし、弱点もあって30歳代といった若い方の乳癌発見率は若干低下します。
検査ですから限界はありますが、マンモグラフィーを用いた検診を行うことで乳癌による死亡を減らすのに有効であることが科学的に確認されています。また、有効性が証明されているのは今のところ40代以上の方に行うマンモグラフィー検診だけです。
【乳癌検診を受けた方がよい人は?】
検診の対象は症状のない人だけです。無症状のうちに乳癌を発見し治療することにより乳癌による死亡のリスクを軽減することができます。検診によるメリットは個人により異なるため、好発年齢の40歳以上の女性は、1~2年に1回、乳癌検診を受けるのがよいとされています。また、危険因子に多く当てはまる方も検診受診をお勧めします。
"しこり"や乳頭分泌などの症状がある方は検診ではなく、直接【乳腺外科外来】にお越しください。
【乳癌検診で要精密検査となったら】
乳癌検診では、約8%の方に精密検査が必要という判定がなされますが、そのうちで精密検査を受けて乳癌と診断されるのはおよそ3~4%(全体の0.3%程度)といわれます。
要精密検査となった方でもほとんどは良性の病気や異常なしであるということなので直ちに心配することはないのですが癌検診は、「癌がある」、「癌がない」ということが判明するまでのすべての過程を含めて考える必要があり、途中で精密検査や治療を受けない場合は、癌検診の効果はなくなってしまいます。精密検査が必要と言われたら、必ず受診しましょう。

子宮内膜症のお話
岐阜市民病院産婦人科部長 山本 和重

子宮内膜症は,本来子宮内にある子宮内膜組織が子宮以外の所で発育する病気です.月経がある年代の5から10%に発生し,出産経験がない方に多く,妊娠により軽快することが多いです。近年増加傾向にあり,晩婚化,少子化,言い換えると月経回数の増加が影響していると言われています。
発病のきっかけとして月経血の逆流があります。月経血は卵管を伝って腹腔内にも流入しています.その中に子宮内膜組織が含まれています。通常は吸収され消滅するのですが,それがうまくできない方がいます。そうすると腹腔内で子宮内膜組織が生き続けてしまうという病気が発症してきます。卵巣に発生すると子宮内膜組織と同じような組織になり,月経時にそこで出血を繰り返し,血液の溜まった嚢胞を形成します。血液は古くなると茶色くなり,チョコレートを溶かしたような液体ということで別名卵巣チョコレート嚢胞と呼んでいます。放置すると稀に破裂や癌化があるので注意が必要です。
症状ですが,月経痛が89%と最も多いです。月経時以外の下腹部痛や腰痛などの慢性骨盤痛が60から80%,排便痛,性交痛,不妊症が50%です。原因不明の不妊症の40~60%に合併するとも言われております。
診断ですが,まず症状をお伺いして,内診で圧痛点や,瘢痕部の有無を調べます。次に超音波検査で卵巣チョコレート嚢胞や癒着の有無を調べます。必要があればMRIや血液検査で有用なCA125を調べます。最終的に診断に迷う時は腹腔鏡検査をすることもありますが,手術治療を同時にするのが一般的です。治療ですが、薬
物治療と手術治療の二つがあります。薬物治療には対症療法とホルモン療法があります。対症療法は主に痛みをとる治療です.ポイントとして,痛みがひどくなる前に痛み止めを服用するほうが効果が高いので,早めの服用をお勧めします。ホルモン治療には女性ホルモンを抑制する偽閉経療法,女性ホルモンを利用した低用量ピルや黄体ホルモン療法があります。最近は低用量ピルや黄体ホルモン剤が主流です。手術治療としては温存手術と根治手術があります。温存手術は子宮,卵巣を温存する手術で,挙児希望の方が対象です。根治手術は子宮卵巣を摘出する手術で,挙児希望のない方や温存手術,薬物治療で効果のない方が対象です。最近は開腹より腹腔鏡手術が主流になっており,特に温存手術は腹腔鏡のほうが術後癒着が少なく有利と考えております。

妊娠と感染症のお話
岐阜市民病院産婦人科副部長 平工由香

今回は、妊娠と感染症をテーマとして①母子感染の特徴について、②ワクチンについて、③最近の動向、④妊娠中に影響を与えやすい感染症、の4つに分けてお話ししました。お話した内容を簡単に述べさせていただきます。
母子感染の特徴として、妊婦さんは免疫を一部抑制しているために感染の影響を受けやすく、重症化することがあります。また妊娠中に感染することで、お腹にいる赤ちゃんへ感染し、影響することもあります。
ワクチンについては、妊娠中に接種可能なワクチンがあること、しかし妊娠中に感染しないほうが良い感染症のなかには、ワクチンがないものやワクチンがあっても妊娠中には接種ができないものがあります。
最近の動向としては、妊娠までに獲得しておいたほうが良い免疫の保有率が近年低下していることが挙げられます。最も良く知られているものとして、風疹です。その抗体獲得が若い女性のみならず、その配偶者となる若い男性でも十分でないことから、妊娠中に初感染し赤ちゃんに影響を与えるうることが問題となりました。
妊娠中に影響を与えやすい感染症として知られる疾患を、先に挙げた風疹も含め、いくつかお話しました。妊娠中に治療可能な疾患もありますが、そうでない疾患もあります。今回のお話を通してお伝えしたいこととは、予防が最重要ということです。
お母さんと赤ちゃんの感染予防対策5か条を、最後に挙げさせていただきます。
1)妊娠中は家族、産後は自分にワクチンで予防しましょう。
→妊娠前に接種しておくことも選択肢です。
2)手をよく洗いましょう。
3)体液に注意
→子供さんの唾液や尿なども触れたら手洗い、食べ物の口移しは避けましょう。
4)しっかり加熱したものを食べましょう!
5)人ごみは避けましょう!
予防法とされていることは、実践しやすいこうした基本的なことが中心です。
妊婦さんのみならず、ご家族とともに実践いただきたいと思います。


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