平成26年度 第10回公開講座の様子

平成26年度 第10回岐阜市民病院公開講座実績

平成26年度第10回岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成27年2月7日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
1.新たな国民病「慢性腎臓病(CKD)とは?」
岐阜市民病院 腎臓内科部長  高橋 浩毅

2.もしかして腎臓も・・・? 慢性腎臓病と糖尿病性腎症
岐阜市民病院 腎臓内科部医長 木村 行宏

3.腎臓病の食事のポイント
岐阜市民病院 管理栄養士 塚原可奈子

平成27年2月7日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成26年度第10回(通算50回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
新たな国民病「慢性腎臓病(CKD)とは?」と題して、岐阜市民病院腎臓内科部長高橋浩毅、次に、もしかして腎臓も・・・? 慢性腎臓病と糖尿病性腎症と題して、 岐阜市民病院腎臓内科部医長木村行宏、最後に、腎臓病の食事のポイントと題して、岐阜市民病院管理栄養士塚原可奈子からの、講演を開催しました。
当日は、150と多くの市民にお集まりいただきありがとうございました。参加された方々も身近な問題で、熱心に聞き入っておられ、質疑応答もあり、盛況のうちに公開講座を終了しました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。(講演内容については、要約を掲載

なお、次回は、3月28日(土)に、「救急・災害よもやま話」と題して、岐阜市民病院災害・救急医療センター救急診療部長波頭経明及び 岐阜市民病院災害・救急医療センター救急看護認定看護師中野克哉からの講演を予定していますので、次回も出席くださるようお願いします。

koukaikouza26 10 1
講演をする
高橋浩毅 腎臓内科部長
koukaikouza26 10 2
講演をする
木村行宏 腎臓内科部医長
koukaikouza26 10 3
講演をする
塚原可奈子 管理栄養士
koukaikouza26 10 4
質疑応答に答える
講演者
koukaikouza26 10 5
公開講座
全体の写真

▲ページの先頭へ

講演要約

新たな国民病「慢性腎臓病(CKD)とは?」
岐阜市民病院 腎臓内科部長 高橋浩毅
もしかして腎臓も・・・? 慢性腎臓病と糖尿病性腎症
岐阜市民病院 腎臓内科部医長 木村行宏

慢性腎臓病(CKD)は、蛋白尿を中心とした腎障害の存在やGFR(糸球体濾過量)が60ml/min/1.73m2未満を示唆する所見が3ヵ月以上続けば該当する。特に蛋白尿は腎機能低下の重要な要因となる。
末期腎不全による透析患者は世界的に急激なペースで増加している。我が国の維持透析患者数は2013年には約31万人となり、原疾患の割合としては糖尿病性腎症が第1位、約4割を占めている。透析予備軍であるCKD患者数も増え続けており、わが国の成人人口の約13%(約1300万人)が治療の必要なCKD患者と推定されている。背景には糖尿病、高血圧などの生活習慣病の存在がある。糖尿病や高血圧を原因とするCKD患者では、慢性糸球体腎炎によるCKD患者よりも心血管疾患・脳虚血性疾患発症のリスクが高いことも報告されており、これらを有する患者には、十分な治療が必要となる。
糖尿病性腎症は糖尿病の3大合併症(網膜症・神経障害・腎症)の1つである。治療不十分な糖尿病性腎症は、10年程度を経て尿蛋白が増加し、腎機能が低下、末期腎不全に至る。食事療法や厳密な血糖管理を含め、十分な治療を行うことで末期腎不全に至る期間は延長できることが明らかとなっており、各患者個人に合った食事療法・薬物療法(血糖,血圧,脂質など)・禁煙などの生活習慣の改善が必要となる。
上記の対策によってなお、末期腎不全に至った場合、腎代替療法を選択することになる。腎代替療法は透析療法と移植療法があり、透析療法には施設通院で行うことの多い血液透析と、在宅で行う腹膜透析がある。また比較的年齢の若い患者には腎移植療法も可能であるが、我が国の大半は生体腎移植であり、近親者(非血縁者も可能)からの提供を受けることが多い。
CKDの早期発見のため、自治体や職場健診などはきちんと受けることが重要である。また高血圧を有する場合、家庭血圧を欠かさず測定することも、CKDの予防と治療に有益である。食事療法はCKDが進行した場合、減塩・低蛋白食が主体となるが、それ以前の予防策として、塩分摂取を控える生活習慣づくりが重要となる。

腎臓病の食事のポイント
岐阜市民病院 管理栄養士 塚原可奈子

腎臓病の食事療法は、タンパク質、エネルギー、塩分、カリウム・リンのコントロールが基本です。
タンパク質をとりすぎないようにすることで、腎臓の働きの低下を抑制したり、透析療法の導入を遅らせたり、リンやカリウムの上昇を抑えることができます。タンパク質を多く含む食品には、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品があります。また、ごはんやパン、麺類などにも含まれています。これらの食品をとりすぎないようにすることや、低たんぱく食品という治療用の特殊食品を利用することで、タンパク質をとりすぎないようにします。
エネルギーが不足すると、体の中にあるタンパク質が分解されて、タンパク質をたくさんとった状態と同じになってしまいます。だからといってとりすぎも腎臓に負担をかけてしまうので、自分に合ったちょうどいいエネルギー量を摂取することが大事です。エネルギーが足りない場合は、油料理を増やすことや、タンパク質を含まないでんぷん食品や栄養補助食品などを利用することで、タンパク質の摂取量を増やさず、エネルギー摂取量を増やすことができます。
食塩はとりすぎると腎機能が低下することにつながるので、とりすぎないよう気を付けることが大事です。食塩は1日6g未満にする必要がありますが、麺類は汁まで全部飲むと、1杯で6~8gの塩分を摂取することになってしまうので、1食で1日分の塩分を摂取してしまうことになります。できるだけ、塩分を多く含む料理や加工食品の摂取は控え、薄味にすることが大事です。ただ、塩分を減らしただけでは食事がおいしくなくなってしまうので、酢やかんきつ類、香辛料や香味野菜、だしなどを活用して、減塩でもおいしく食 べる工夫ができるといいと思います。
カリウムやリンのコントロールについては、どちらもタンパク質を多く含む食品に含まれていることが多いので、低たんぱく食にすることで、摂取量を減らすことができます。またカリウムはイモ類や野菜、海藻、果物にも多く含まれていますし、リンは加工食品にも含まれているので注意が必要です。ただし、カリウムは水に溶けやすい性質があるので、野菜などは水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることでカリウムの量を減らすことができます。
以上が食事療法の基本になりますが、どの程度のコントロールが必要かは1人1人違います。具体的にどんな食事にしたらいいのかということは、主治医、栄養士にご相談ください。


ページの先頭へ