平成27年度 第12回市民公開講座の様子

平成27年度 第12回岐阜市民病院公開講座実績

平成27年度第12回(通算63回)岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成28年3月19日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容

お薬の飲み方、飲み合わせで効果が違うの?
岐阜市民病院 薬剤部医薬品情報管理室長 小林 健司

新しい抗がん剤(分子標的薬)の効果と副作用
岐阜市民病院 薬剤部がん薬物療法認定薬剤師 堀 晃代

患者さんへの抗がん剤副作用説明書の公開と地域連携の強化
岐阜市民病院 薬剤部医療薬学会指導薬剤師(薬務室長) 渡水井 貴詞

平成28年3月19日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成27年度第12回(通算63回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。最初に、「お薬の飲み方、飲み合わせで効果が違うの?」と題して、岐阜市民病院薬剤部医薬品情報管理室長小林健司から、次に、「新しい抗がん剤(分子標的薬)の効果と副作用」と題して、岐阜市民病院薬剤部がん薬物療法認定薬剤師堀 晃代から、最後に、「患者さんへの抗がん剤副作用説明書の公開と地域連携の強化」と題して、岐阜市民病院薬剤部医療薬学会指導薬剤師(薬務室長)水井貴詞からの講演を開催しました。当日は、140人と多くの市民の皆様にお集まりいただきありがとうございました。薬、抗がん剤については、身近な問題でもあり、活発な質疑応答もあり、公開講座も盛況のうちに終了しました。また、アンケ-トにもご協力いたただきありがとうございました。

なお、次回の平成28年度第1回(通算64回)は、4月9日(土)に、最初に、知っておきたい「おなかの病気」「潰瘍性大腸炎とはどんな病気なの?」と題して、岐阜市民病院消化器内科部副部長 小木曽富生から、次に、「C型慢性肝炎の治療にインタ-フェロンはいらなくなったの?」と題して、岐阜市民病院消化器内科部医長 鈴木祐介から、最後に、「胆石があるといわれたら・・・」と題して、岐阜市民病院消化器内科部医長河口順二からの講演を予定していますので、次回も出席くださるようお願いします。

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挨拶をする
薬剤部長後藤千寿及び講演者
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講演をする
薬剤部医薬品情報管理室長 小林健司
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講演をする 薬剤部
がん薬物療法認定薬剤師 堀晃代
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講演をする薬剤部医療薬学会指導薬剤師
(薬務室長) 水井貴詞
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質疑応答に答える 講演者

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講演要約

お薬の飲み方、飲み合わせで効果が違うの?
薬剤部医薬品情報管理室長 小林健司

2014年11月に施行された医薬品医療機器等法(旧薬事法)では、国民の役割として、薬を正しく理解し使用することが責務とされた。しかし、薬についての最低限の知識と理解がなければ、その責務を果たすことは難しい。
今回の平成27年度第12回(通算63回)岐阜市民病院公開講座では、お薬のお話(抗がん剤を中心に)をメインテーマにお薬の飲み方、飲み合わせで効果が違うの?について最低限知っておくべき内容を「くすりの知識10ヵ条」中心に紹介した。
患者及び市民、一人ひとりが最低限の知識を持ち、薬の正しい使い方を身に付けることが重要であることをPTP包装の注意点など具体例で説明した。
第1条
人のからだは「自然治癒力」を備えています。しかし「自然治癒力」が充分に働かないこともあります。そのような時に病気やけがの回復を補助したり、原因を取り除くためにくすりを用います。
第2条
くすりは長い年月をかけて創り出され、承認制度により有効性や安全性が審査されています。
第3条
くすりには、医師の処方せんが必要な医療用医薬品と処方せんがなくても薬局・ドラッグストアなどで直接買える一般用医薬品があり、その販売は法律で規制されています。
第4条
くすりは、使用回数、使用時間、使用量など、決められた使用方法がそれぞれ異なっており、医師・薬剤師の指示や、くすりの説明書に従って正しく使用しましょう。
第5条
医療用医薬品は、自分の判断で止めたり量を減らしたりせず、また、そのくすりを他の人に使ってはいけません。
第6条
くすりには主作用と副作用があり、副作用には予期できるものと予期することが困難なものがあります。
第7条
くすりを使用していつもと様子が違う時や判らないことがある時は、医師・薬剤師に相談しましょう。
第8条
くすりは高温・多湿・直射日光を避け、子供の手の届かないところに保管しましょう。
第9条
「サプリメント」や「トクホ」は食品であり、くすりではありません。
第10条
「おくすり手帳」は大切な情報源です。一人一冊ずつ持ちましょう。

新しい抗がん剤(分子標的薬)の効果と副作用
薬剤部がん薬物療法認定薬剤師 堀 晃代

分子標的薬とは
分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定の分子を狙い撃ちしてがんの増殖を抑える薬です。分子標的薬単独あるいは従来の抗がん剤と組み合わせて用いることで治療効果が得られます。
分子標的薬の種類
分子標的薬はある特定の分子が、がんを成長させる栄養や成長を活性化させる増殖因子と結合するのを阻止することで、がんの増殖や転移を抑えます。
例えば、ゲフィチニブなどのEGFR阻害薬はEGFR(上皮成長因子受容体)に結合して増殖を活性化させる指令の伝達を遮断し、がんの増殖を阻止します。また、ベバシズマブなどの血管新生阻害薬は、がん細胞を増殖させる栄養を供給する新しい血管の形成を抑えることによって、がんを兵糧攻めにすると考えられています。その他にもHER2阻害薬やmTOR阻害薬、ALK阻害薬などいろいろな種類の分子標的薬があります。
分子標的薬の主な副作用とその対策
分子標的薬の副作用には皮膚障害、下痢、高血圧、薬剤性肺障害などあります。出現しやすい副作用や症状の強さ、出現時期は薬によって異なり、個人差があります。
薬剤性肺障害はほとんどの分子標的薬に起こりうる副作用ですが、事前に肺障害の発症を予測することは不可能です。発熱・咳・息切れなど風邪の初期症状に似た症状が出現した場合はすぐに申し出てください。
皮膚障害が出やすい分子標的薬は①EGFR阻害薬と②血管新生阻害薬です。これらの薬剤による皮膚障害の特徴は大きく異なり、また対処法も違ってきます。①はニキビに似たざ瘡様皮疹が出現します。このような皮膚障害が出現した人は薬が効いている可能性が高いため、保湿剤とステロイド外用剤にて皮疹をコントロールし出来るだけ治療を継続します。一方、②では手足が赤く腫れ上がる手足症候群が出現します。この症状は薬の効き目とは関係なく、ステロイドで治療してもなかなかよくなりません。手足に痛みを感じるようになったら、減量または休薬をし、症状の改善をみて薬の量を調節して治療を継続していきます。
下痢を生じやすい分子標的薬を使う場合は、刺激の強い食べ物は控え、温かく消化の良い食事を少量ずつ摂取してください。脱水症状にならないようこまめに水分補給をしてください。
高血圧になりやすい薬剤を使用する場合は、毎日決まった時間に血圧の測定をし、診察時に申し出てください。降圧剤でコントロールしつつ治療を継続していきます。
さいごに様々な分子標的薬がありますが、使用できるがん種や効果の期待できるタイプが決まってきます。また副作用も多様化しているため、事前に主治医や薬剤師の説明をよく聞くようにしましょう。

患者さんへの抗がん剤副作用説明書の公開と地域連携の強化
薬剤部医療薬学会指導薬剤師(薬務室長)水井貴詞

抗がん剤は,怖いと多くの方が感じてみえると思います。しかし,抗がん剤に限らず,他の薬も適正に安全に使われなければ,同様に怖いものとなります。安全に治療を受けて頂くこと,薬を安全に使うというのは,「リスク」を最小限にし,「ベネフィット」を最大限に引き出すことになります。そのために,入院中や外来で薬剤師が治療の内容と注意すべき点,副作用の初期症状について患者さんに説明を行っています。患者さんには,その内容を理解してもらい,自宅で起きうる症状とその対応を薬剤師が説明を行っています。
岐阜市民病院では,みなさん(患者さん)が安心して治療(がん治療)を受けて頂くためには,病院と薬局との説明の違いを無くし,病院の医師,看護師,薬剤師等の医療スタッフとかかりつけ薬局の薬剤師が同じ考え,同じ資料で患者さんにかかわることができるよう「がん化学療法説明書」を順次作成しています。「がん化学療法説明書」は岐阜市民病院のホームページからみなさん(患者さん)もダウンロードすることができます。また,その情報をかかりつけ薬局の薬剤師と共有するための場として「地域連携における安心ながん化学療法を進める会」を開催しています。
この取り組みによって、抗がん剤治療を受けられる患者さんがかかりつけ薬局にかかる時、治療の内容がわかることで副作用などに相談にも円滑に対応ができ、患者さんに安心につながることになります。
また、お薬手帳を活用することで、治療をより安心して受けていただくことができます。お薬手帳の活用には5つの「い」いことを紹介しました。その中で、あまり知られていない「ご家庭での症状を書いておいて、診察に臨むこと」をお伝えしました。診察室で確実に伝えていただくために活用していただきたいと思います。

・医療機関にかかる時は必ず持って行きましょう
・言いたい事や伝えたい事を書いておきましょう 
・一般用医薬品(OTC医薬品、大衆薬)・健康食品も記録して
・いつも携帯・いつも同じ場所に保管して
・一冊にまとめましょう

岐阜市民病院では、みなさんが安心して治療を、特に安心ながん治療を受けていただくために、継続して「がん化学療法説明書」を作成し、「地域連携における安心ながん化学療法を進める会」を開催し、かかりつけ薬局と連携していきます。


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