平成28年度 第10回市民公開講座の様子

平成28年度 第10回岐阜市民病院公開講座実績

平成28年度第10回(通算73回)岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成29年1月28日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
「他人事とは思っていませんか?
~あなたの背後に忍び寄る糖尿病~」

岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 青山 智

「糖尿病のくすりはどんなくすりなの?
~のみ薬の正しい理解について~」

岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 大野佑城

「糖尿病のくすりはどんなくすりなの?
~注射薬の正しい理解について~」

岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 堤 真希子

「備えあれば憂いなし!!
~災害が起きたときに困らないための下準備~」

岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 早見知浩

平成28年度第10回(通算73回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
平成29年1月28日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、平成28年度第10回(通算73回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
「他人事とは思っていませんか?~あなたの背後に忍び寄る糖尿病~」と題して、岐阜市民病院薬剤部糖尿病療養指導士青山 智から、次に、「糖尿病のくすりはどんなくすりなの? ~のみ薬の正しい理解について~」と題して、岐阜市民病院薬剤部糖尿病療養指導士大野佑城から、次に、「糖尿病のくすりはどんなくすりなの?~注射薬の正しい理解について~」と題して、岐阜市民病院薬剤部糖尿病療養指導士堤 真希子から、最後に、「備えあれば憂いなし!!~災害が起きたときに困らないための下準備~」と題して、岐阜市民病院薬剤部糖尿病療養指導士早見知浩から講演がありました。当日は、120名と多くの方が、出席いただきました。多くの質疑応答もあり、盛況のうちに終了しました。また、アンケートにもご協力いただきありがとうございました。
(講演内容については、要約を掲載
なお、次回の、平成28年度第11回(通算74回)は、2月18日(土)に、最初は、「胃がんの治療と低侵襲手術」と題して、岐阜市民病院内視鏡外科部長奥村直樹から、次に、「膵がんの最近の治療」と題して、岐阜市民病院外科部副部長佐々木義之から、最後に、「手術の必要な虫垂炎」と題して、岐阜市民病院外科部医員多和田 翔 から講演を予定していますので、次回も出席くださるようお願いします。

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挨拶をする 薬剤部長 後藤千寿
 
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講演をする 薬剤部糖尿病療養指導士
青山 智
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講演をする 薬剤部糖尿病療養指導士
大野佑城
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講演をする 薬剤部糖尿病療養指導士
堤 真希子
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講演をする 薬剤部糖尿病療養指導士
早見知浩
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質疑応答に答える 講演者
 
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質疑応答に答える 講演者

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講演要約

「他人事とは思っていませんか? ~あなたの背後に忍び寄る糖尿病~」
岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 青山 智

糖尿病および糖尿病を強く疑われる方は年々増加しています。その多くは40歳代以降に発症が増加する2型糖尿病です。厚生労働省の平成27年国民健康・栄養調査によると近年は各年代のエネルギー摂取量が減少しているにも関わらず糖尿病患者が増加している背景があります。原因としては、食生活の欧米化、仕事などで夕食の時間が遅くなることや、自家用車と公共交通機関の利用等による運動不足などが考えられます。
糖尿病は、血液中の血糖値が高いことによって血管が障害を受け、それが長い年月をかけて合併症という形で現れます。糖尿病は初期症状が認められないことが多く、適切な指導を受けないまま放置されることが多いと思われます。糖尿病の合併症には小さな血管の障害(微小血管障害)と大きな血管の障害(大血管障害)があります。微小血管障害には腎臓が悪くなり血液透析が必要になったり、眼の血管が障害を受けて網膜症になったり、神経が障害を受けたりします。大血管障害には心臓や脳の血管が障害を受け、心筋梗塞や脳梗塞が起こることがあります。また、食後血糖が高い方は正常な方に比べ心血管系疾患にり患しやすい報告もあり、糖尿病予備軍の方も気を付ける必要があります。
糖尿病の治療は、食事療法、運動療法をしっかり行っていただいた上で薬物療法が開始になります。食事については、規則正しくバランスに気を付け、野菜などの食物繊維を積極的に摂取しましょう。食物繊維は始めに摂取すると血糖上昇を緩やかにする働きがあります。また外食する際はカロリーを参考に和食を選ばれると良いと思います。また運動については、軽い運動から始め楽しみながら続けられるものにしましょう。ただし積極的に運動を行わない方が良い場合もありますので、その場合は医師に相談されると良いと思います。ただし、糖尿病で薬物治療を受けている方が運動をする場合は食後に行ってください。
食事も運動も継続していくことが大事になってきます。無理なく続けられることを1つ考えてみてはいかがでしょうか。

「糖尿病のくすりはどんなくすりなの?~のみ薬の正しい理解について~」
岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 大野 佑城

薬物療法は、食事療法と運動療法が効果不十分なときに用いられます。薬物療法には内服薬と注射薬があります。内服薬には、インスリンを分泌する薬(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬)、インスリンの働きを良くする薬(ビグアナイド薬、チアゾリジン薬)、食事からの糖の吸収を緩徐にする薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)、余分な糖を尿中へ排出する薬(SGLT2阻害薬)に大きく分けることができます。
薬の服用時間には、食後、食前、食直前、食間などがあります。食後服用は、食事をしてから約30分以内に薬を飲むことで、同様に食前は食事の30分前、食直前は食事の直前(約5〜10分以内)、食間は食後2時間に薬を飲むことです。糖尿病の薬の中で食直前に飲む必要がある薬は、速効型インスリン分泌促進薬とα-グルコシダーゼ阻害薬に分類される薬です。
薬を飲み忘れた場合は、決して2回分を一度に飲まないようにしてください。それは1回分の有効な量を超えて副作用が出現しやすくなるからです。飲み忘れに気づいた場合にどう対処するかは薬の種類や状況により異なりますので、あらかじめ医師、薬剤師に相談してください。飲み忘れを防ぐ一つの手段として薬の一包化があります。一包化とは、薬を飲む時間ごとに一つの小さい袋にまとめることです。特に内服薬の種類が多い場合に、一包化は有効です。
薬には副作用がありますが、あらかじめ副作用の内容を知っておくことで予防できる副作用もあり、また副作用が起きた場合にすぐに対処することもできます。例えばSGLT2阻害薬の副作用には、頻尿、脱水、尿路感染、皮膚症状などがあります。脱水を予防するためにいつもより水分を500mL程度多くとるように説明しており、尿路感染を防ぐために毎日シャワーをするなど清潔に保つように説明しています。皮膚症状については、痒み、湿疹が出現したらすぐに受診するように説明しています。ビグアナイド薬は、造影剤を使用する検査で中止する場合があります。中止の可否、中止期間については検査内容や状況により異なりますので、現在使用している内服薬を先生に伝えておくことが大切です。
最後に、主治医の先生は患者さん一人一人に適した薬を選択しています。先生の指示された通りに薬を飲むようにしてください。

「糖尿病のくすりはどんなくすりなの?~注射薬の正しい理解について~」
岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 堤 真希子

インスリン製剤

「注射」=「痛み」が思い浮かびますが、自己注射に使用される針は太さも長さも採血時の針の3分の1程度になります。インスリンを打ち始めると生涯続くと思われがちですが、2型糖尿病ではインスリン注射によって良好な血糖コントロールを行うことで再び飲み薬での治療が可能になることもあります。
インスリンの自己注射の際の主な注意点ですが

  1. 体の部位(腹部や太もも等)によりインスリンの吸収速度が異なるため、毎回2~3cmずつずらしながら同じ部位に打ちます。
  2. 薬の保管は薬を受け取ってから開封するまでは凍結を避けながら冷蔵庫で保存します。使用期限は開封後28日間です。(※レベミルは42日間)
  3. 旅行中は普段と違う食生活になったり、海外旅行の場合は時差によって食事の回数が増減することがあるので普段よりも低血糖に注意しましょう。旅行中のインスリン量は事前に主治医へ確認して下さい。
    飛行機に持ち込む際は事前に航空会社へ連絡を行います。機内での凍結を防ぎ、搭乗中に使用できる様にする為必ず手荷物に入れて下さい。
    インスリン注射は医師の指示通りに使用すれば大変効果的な治療法です。
    インスリン治療中でも運動・食事療法の併用は継続します。
インクレチン製剤

食事は食道や胃を通って小腸へ運ばれます。小腸から膵臓へとインスリンを出すためのホルモンが送られますが、このホルモンの一種を「インクレチン」と呼びます。特にインクレチンの中のGLP-1というホルモンは強い働きをもちます。このGLP-1は体の中にあるインクレチンを分解する酵素(DPP-4といいます)に分解され、わずか1~2分で効果が無くなってしまいます。これらに着目をして

  • GLP-1をそのまま注射薬にしたもの
  • DPP-4の働きを阻害する飲み薬

が発売されました。それぞれの薬に特色があり、1日1回タイプや2回のもの、週に1回タイプのものや、腎臓の機能や肝臓の機能によって使い分けするものなどそれぞれの方に合ったタイプの薬剤が選択できます。
GLP-1は血液中のブドウ糖の濃度が80mg/dL以下では働きませんが、他の糖尿病のお薬を飲まれている方やインスリンを併用されている方は低血糖に対する注意が必要です。
GLP-1は腸に作用したり胃からの食べ物の排出を遅らせるために、下痢や便秘・吐き気や嘔吐を引き起こすこともあります。ほとんどの方は使用を続けていく事で症状が緩和されますが、あまりに症状が辛い時や長く続く場合は主治医の先生に相談してみて下さい。
この他にも自己注射や糖尿病の薬剤についての疑問、相談等ありましたらお気軽にお近くの薬剤師へご相談下さい。

「備えあれば憂いなし!!~災害が起きたときに困らないための下準備~」
岐阜市民病院 薬剤部糖尿病療養指導士 早見 知浩

糖尿病の治療をしている方は、災害時には血糖値が上がりやすくなり糖尿病が進行してしまいます。その原因は、2つあります。1つは、色々なストレスがかるため体を守ろうとし血糖値が上がります。もう1つは、被災地では生活が不規則となり救援物資は炭水化物に偏った食事となり血糖値が上がります。被災地で少しでも血糖値を上げないためには何をすべきでしょうか?そうです。病院で出されている薬を間違いなく飲むことです。さてここで質問です。今、飲んでいる薬の名前って覚えていますか?食前に飲む薬、食直前に飲む薬、食前に飲む薬、食直前に打つ薬というように飲み方、注射を打つタイミングだけを覚えているだけで、薬の名前は知らないってことはないですか?糖尿病の薬だけでも飲み方、使い方はさまざまで、それぞれ10種類を超えます。用法のみでは薬は分かりません。そのために薬の名前を覚えましょう。そういわれてもカタカナは覚られないという方がほとんどではないでしょうか?そこで薬の名前を覚えなくても困らない方法を3つお伝えします。まず1つ目は、自宅に用意されている非常用袋の中に最新のお薬手帳のコピーを入れることです。2つ目は、携帯電話又はスマートフォンで薬剤の写真を撮っておくことです。3つ目はスマートフォンのお薬手帳のアプリを使用し登録するということです。その中でも私がおすすめするのは写真を撮っておく方法です。東日本大震災の時、津波で全てが流され跡形もなくなりましたが、多くの方が連絡手段として携帯電話やスマートフォンを手にして逃げた人が多いと言われています。災害が起きても間違いなく持ち出す携帯電話やスマートフォンに写真を撮っておけば、薬の名前が分からなくて困ることはありません。薬の一包化をされている方は、内容が確認できるようにお薬手帳または薬剤情報を写真に撮っておいて下さい。
糖尿病の方の中には、インスリンのような注射薬を打っているという人もいるかと思います。注射薬を使用している人は、注射針がないと投与することができないので、必ず注射針などは常時、携帯しておいてください。
いつ災害が起こるかわかりません。災害に対して非常用袋の用意や心構えをしておくことが必要です。備えあれば患いなし。これを合言葉に少しでも多くの人に準備してもらえたらと思います。


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