平成30年度 第11回市民公開講座の様子

平成30年度 第11回岐阜市民病院公開講座実績

平成30年度第11回(通算97回)岐阜市民病院公開講座を開催しました

日時
平成30年2月16日(土)
午後2時30分~午後4時
講演内容
体内から照射する放射線治療 ~内用療法って、なに?~
放射線治療部長 飯田高嘉
放射線治療の実際 ~放射線治療って効くの ? 安全 ?
放射線治療部医員 伊東政也

平成30年度第11回(通算97回)岐阜市民病院公開講座を開催しました。
平成31年2月16日(土)、岐阜市民病院内西診療棟4階サルビアホールにおいて、放射線治療部長 飯田高嘉から、「体内から照射する放射線治療 ~内用療法って、なに?~」を、放射線治療部医員 伊東政也から、「放射線治療の実際 ~放射線治療って効くの ? 安全 ?」を、テ-マに講演を行いました。当日は参加者数、約120名と多くの方にお集まりいただきました。
また、講演会終了後、質疑応答を受けるとともに、アンケートにもご協力いただき、盛況のうちに終了できました。
なお、次回は、平成31年3月16日(土)に、小児血液疾患センター長 篠田邦大から、「小児がんの現在」を、がん化学療法看護認定看護師 小瀬木裕美・近藤仁美から、「家族で一緒に考えよう~がんについて~」を、テ-マに講演を予定していますので、ぜひご参加ください。

(講演内容については、要約を掲載

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挨拶及び講演をする
放射線治療部長 飯田高嘉
講演をする
放射線治療部医員 伊東政也
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質疑に答える 講演者

講演要約

「体内から照射する放射線治療 ~内用療法って、なに?~」
岐阜市民病院 放射線治療部長  飯田高嘉

内用療法という放射線治療があることをご存じでしょうか?放射線治療というとエックス線(もしくはガンマ線)を病巣のみに照射する、局所的な治療法というイメージが強いかと思います。それに対して内用療法は放射線を放出する薬剤を経口的あるいは経静脈的に全身投与するため、全身にわたって効果を発揮する、という点が特徴的です。今回はこの内用療法を取り上げようと思います。
体内に取り込まれた放射性物質はその物理的・科学的特性により、特定の組織・臓器に集積することがあります。これを臓器親和性といいます。たとえばヨウ素は甲状腺に、ラジウムは骨に集積しやすいといった性質です。だから全身に投与してもすぐに特定の臓器(病巣)のみに集積し、あとは速やかに体外へ排出されるため、全身が被ばくすることはないのです。今回は特にこのラジウムに注目したいと思います。
学生の時に勉強された周期表を覚えておいででしょうか?(水兵リーベ僕の船って語呂合わせで暗記したアレです。) その周期表で縦の列が同じ物質は性質が似ている、と習われたと思います。骨の主成分であるカルシウムの縦の列にラジウムがあるため、体がカルシウムの性質に似ているラジウムを骨に取り込んでしまうのです。この作用は骨を造る働きが大きい前立腺癌の骨転移部で特に強いといわれています。
前立腺癌など骨を造る作用が大きな骨転移の治療に使われているものとしてラジウム-223があります。ラジウム-223は遠方まで影響を及ぼしてしまう電磁波のガンマ線は放出しません。ラジウム-223はアルファ線といったヘリウム原子核の流れを出します。空間を媒体とした波であるガンマ線と違い、ヘリウム原子核は実体をもっておりますので周囲の原子核にぶつかってすぐに減速し、止まってしまいます。だから周囲臓器への被ばくはあまり心配しなくてもよいのです。ヘリウム原子核は巨大なのであっという間に減速・停止し(停止までの距離は細胞数個分です。)、さらに周囲の癌細胞を破壊する力も甚大です。そのためヘリウム原子核であるアルファ線を放出するラジウム-223は治療効果が高く、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(男性ホルモンの分泌を抑える治療を実施しても症状が悪化する前立腺癌のこと)において症状を軽減するのみならず全生存期間といった生存率まで改善することが分かっています。
骨転移による骨折の有無が生存期間に影響している、ということがわかっており、骨転移による骨折を防ぐことが生存期間の延長につながっていると考えられています。また骨転移部から肺や肝臓といった重要臓器への転移を防いでいるという可能性も考えられています。 
いずれにせよ前立腺癌という病気は骨転移を来した段階になってもすぐに命にかかわるような事態にはなりません。かかりつけの泌尿器科の先生とも良くご相談頂いて患者様の価値観・人生観にあった治療法を選ばれるのが肝要かと思います。


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