スタッフ紹介
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放射線治療ついて
がん治療には「手術」「薬物療法(化学療法・免疫療法)」「放射線治療」という3つの主要な治療法があり、これらは「がん治療の三本柱」と呼ばれています。放射線治療は体の外からがん細胞を狙って治療を行う非侵襲的な手法として、多くの患者さんに選ばれています。
近年では技術の進歩により治療の精度が飛躍的に向上しています。特に「強度変調放射線治療(IMRT)」や画像誘導放射線治療(IGRT)」などの最新技術により、がん病変を選択的に高精度に照射できるようになりました。その結果、周囲の正常な臓器への影響を最小限に抑えることができ、副作用も大きく軽減されています。
また、患者さんひとりひとりの病状に合わせた治療計画を立てることで、より効果的で安全な治療が可能となっています。外来通院で治療を受けられるケースも多く、生活の質(QOL)を保ちながら、がんと向き合うことができます。
当院では、最新の放射線治療機器と専門スタッフによるチーム医療で、患者さんに最適な治療を提供できるように心がけています。一人で悩まずに、ぜひご相談ください。
最新トピックス
2025年6月からAccuray社の最新高精度放射線治療装置RadixactX9が稼動しました。
| Radixact X9 |
CTやMRIによく似たRadixactX9は、従来型の放射線治療装置とは異なり、ヘリカル照射(らせん軌道照射)による治療が特徴です。それにより最大135cmの範囲を一度に治療することができきます。食道や骨盤部、血液疾患等においても、照射野を分割せず、つなぎ目のない状態で治療が行えます。また最新のRadixactX9には体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)を搭載しており、体表面認識による位置合わせや、治療中の動体監視により安全な治療が行えます。
当院における治療実績 (2024年1月~2024年12月)
総治療件数 433件
特殊照射件数
※表は横スクロールできます
| SRS 脳定位照射 |
SBRT 体幹部定位照射 |
RI内用療法 | 全身照射 |
|---|---|---|---|
| 25 | 28 | 19 | 29 |
IMRTの内訳
※表は横スクロールできます
| IMRT 総件数 |
前立腺 | 頭頚部 | 脳 | 骨盤部 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| 114 | 39 | 11 | 4 | 22 | 48 |
SRS(脳定位照射)
脳腫瘍に対するピンポイント照射
SBRT(体幹部定位照射)
肺がん、肝臓がんに対するピンポイント照射
IMRT(強度変調放射線治療)
副作用をおさえた最新の高精度放射線治療
青字をクリックすると専用ページに移動します。
当科の特色
当院は地域がん診療連携拠点病院としてがん治療に強く力を入れています。
その一つの放射線治療部を紹介したいと思います。
"すべては患者さんの利益のために"
この言葉を信念にスタッフ一同が一丸となって放射線治療に取り組んでいます。
放射線腫瘍学会認定施設
2018年4月に安全かつ高精度の放射線治療を実施できる施設として、日本放射線腫瘍学会から認定され、2021年には認定施設の更新を行っています。
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放射線治療専門医
常勤医2名、内1名が放射線治療専門医の資格を持っており、ダブルチェックによる放射線治療計画を行っております。強度変調放射線治療IMRT(後述)などの高度な治療には、2名の放射線治療常勤医が必須となっています。
医学物理士
放射線治療品質管理士
放射線治療専門放射線技師
放射線治療計画に参与し、放射線治療専門医の治療計画に間違いが無いか確認します。適切に高度な治療計画ができるように技術系からサポートする役割を担っています。当院では、2名の医学物理士、1名の放射線治療品質管理士、4名の放射線治療専門放射線技師および5名の診療放射線技師が携わっています。
がん放射線療法看護認定看護師
放射線治療中の患者さんの身体の副作用などのケアを含め、精神的にサポートする役割を担っています。また患者さんの要望に応じて放射線治療専門医と適切な処方や治療方法を相談して、患者さんと医師とのつなぎの役割をします。
くつろいだり、読書もできる待合室
当部の待合室にはできるだけ患者さんおよびご家族が安心していただけるように、ビデオ、治療や当院に関するパンフレット等をご用意しています。
テレビ
テレビは常時視聴できます。当部は予約制なので待合が一人の場合は好きな番組をご覧いただけます。
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放射線治療ビデオ
放射線治療というと怖い印象を持たれる方がおられるかもしれません。そのため、日本放射線腫瘍学会が作成しました放射線治療の実際のビデオを常時視聴できます。がんと診断されたら一度ビデオを見に来ていただけるといろいろなことが分かると思います。![]()
図書棚
放射線治療だけでなく、広くがん患者さんのための本が置いてあります。がん治療(抗がん剤や手術も含めて)に関して興味のある方は、放射線治療部25番にお越しいただければ待合室で閲覧していただけます。
治療開始までの流れ
1 診察
専門の医師による診察を受けていただきます。患者さんの状態を十分に把握したうえで、治療方針を決定します。治療を進めていくなかで不安などを伺い、治療期間中に気を付ける点、注意事項、副作用などについて説明します。
2 治療計画用CT撮影と固定具作成
治 療する部位や範囲を決定するために治療計画用のCT検査(CTシミュレータ)を受けていただきます。 この時実際に治療する体位になります。頭頚部の治療を行う場合は頭の動きや治療部位のズレを防ぐため、頭部を固定するシェルと呼ばれるマスクを患者さんご とに作成することもあります。
3 治療計画
治 療する部位や範囲を決定するために治療計画用のCT検査(CTシミュレータ)を受けていただきます。 この時実際に治療する体位になります。頭頚部の治療を行う場合は頭の動きや治療部位のズレを防ぐため、頭部を固定するシェルと呼ばれるマスクを患者さんご とに作成することもあります。
4 検証
計画された照射方法どおり正しく照射できるか、専門の放射線技師による検証を行います。
5 治療開始
治療当日、実際の治療室で治療部位のX線画像を撮影し、確認等行い治療を開始します。
放射線治療による副作用
放射線治療の副作用は、照射する部位や線量・年齢・全身状態などに影響を受けるため個人差があり、治療期間中や終了直後に現れる急性期障害と、終了してから半年以上も経過して現れる晩期障害に大別されます。
急性期障害としては、疲れやすい・食欲がなくなる・貧血・白血球数や血小板の減少・照射部位の皮膚の変化などがありますが、これらは治療の終了とともに回復していくことがほとんどです。また、治療する部位によってそれぞれ異なった副作用が現れることがあります。これらの副作用も一時的なもので、時間がかかりますが治療前の状態に戻ることがほとんどです。
重篤な晩期障害は、放射線治療技術が進歩した現在では極めてまれにしか現れません。また、照射する線量や治療する範囲などで発生頻度は推定可能ですので、細心の注意を払い治療計画を立て治療しています。
放射線治療を受けられる方へ
放射線治療中の日常生活は普段通りにしていただいて構いませんが、次のようなことに注意してください。
休息
放射線治療を受け始めてからしばらくすると、少し体が疲れやすくなることがあります。(専門的には放射線宿酔といいます)もし、疲れを感じ始めたら、十分な睡眠と、休息をとるようにしましょう。
入浴
治療中も入浴していただいて構いませんが、ぬるめのお湯にしてください。
治療開始時に、体の前面と両側面の皮膚にマジックと特殊なシールでマークを付けます。このマークで実際の照射の位置合わせを行いますので、このマークを消してしまわないように注意してください。
体を洗うときはタオルで擦らず、泡立てた石鹸で体を撫でるようにして汚れを落としてください。体を拭くときは押さえるように水分をとってください。
栄養
バランスのとれた食事を摂りましょう。
根治的放射線治療 -がんの完治を目指す高精度な治療法-
放射線治療は、がんに対する三大治療法(手術、薬物療法、放射線治療)の一角を担っています。中でも根治的放射線治療は、がんの完全な治癒を目指す治療法であり、放射線療法単独で行われる場合に加え、手術や抗がん剤治療と組み合わせる「集学的治療」の一環としても広く活用されています。
当院では、がんの種類・進行度・患者さんの全身状態に応じて、最も効果的な治療法を選択します。例えば放射線治療と抗がん剤治療を併用することで、相乗効果を生み出し、がん細胞をより効果的に治療することが可能になります。
さらに、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療(SRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)などの高精度放射線治療により、がん病巣を正確に捉え、正常組織へのダメージを最小限に抑えながら、治療効果を最大化しています。
放射線治療は身体への負担が比較的少なく、通院しながら日常生活を送りつつ治療を受けられるケースも多くあります。患者さん一人一人の状況に応じた「最適な治療計画」を立てて、放射線治療専門チームが治療をサポートします。
緩和的放射線治療 -症状緩和と生活の質の向上をめざして-
緩和的放射線治療はがん特有の痛みを和らげたり、がんが引き起こす様々な症状を軽減したりするなど、患者さんの生活の質を維持・改善することを目的とした治療です。代表的なものとして、痛みを伴う転移性骨腫瘍や転移性脳腫瘍、上大静脈症候群等に用いられます。治療の回数は患者さんの状態に合わせて1~10回程度であり、身体的な負担が少なくなるように努めます。当院では放射線治療全体のうち約3割の患者さんが緩和的放射線治療を受けられています。その適応については、かかりつけ医と相談し当院もしくは当科にご連絡ください。
左の乳房に対する深吸気息止め照射(DIBH:Deep inspiration breath hold)
近年、左乳癌放射線治療時における心臓の線量と治療終了後数年以降の心血管疾患との関連が指摘されています。これを軽減する方法として深吸気息止め照射(DIBH)法が確立されており、当院でも行っています。
息を大きく吸い込むことで胸郭が広がり、横隔膜は足側に下がり心臓が縦に伸びます。これにより心臓と胸壁の間の隙間が大きくなり、心臓に当たる放射線を減らすことができます。
前立腺がん治療における放射線治療科の取り組み
当院では2014年から前立腺がんの強度変調放射線治療(IMRT)を開始し、2024年までに約350件行っております。2020年からは泌尿器科と協力し、ハイドロゲルスペーサーの挿入術を取り入れています。治療対象である前立腺と正常臓器である直腸の間にスペーサーを挿入することで、直腸の副作用を軽減しています。詳細については当院泌尿器科のページを参照ください。
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2023年よりハイドロゲルスペーサー挿入後の患者様に対し、治療期間を短くしながら同様の治療効果が得られる寡分割照射を始めました。前立腺がんの放射線治療は照射回数を37~39回に分割する方法が普及していますが、当院ではスペーサーの導入、高精度の画像誘導放射線治療により、安全で確実に直腸の線量を減らせるという観点から、1回あたりの線量を増加して20回程度の照射回数で同様の効果が得られる寡分割照射法を行っております。これにより、治療期間が短縮し患者様の生活面での負担も減らせると考えております。適応については主治医や地域の医師、もしくは当科にご相談ください。
Q&A
Q.1回の治療時間はどのくらいかかりますか?
A.通常は10分~20分程度です。
定位放射線照射等の精度の高い治療を行う場合には30分以上かかる場合もあります。
Q.治療開始から終わるまでどのくらいかかりますか?
A.治療期間は部位により異なり、通常は2~7週間(10~35回照射)程度です。
定位放射線照射(SRS/SRT)を行う場合は、治療を数回(1週間程度)で終了することもあります(定位放射線照射をご参照ください)。
Q.髪の毛が抜けたりしませんか?
A.放射線による障害は放射線を照射した場所にしか起きないので、胸やお腹の治療をされている方は髪の毛が抜けることはありません。
また、放射線による脱毛は殆どが一時的なもので時間が経つと生えてきます。
Q.放射線は体に残りませんか?
A.放射線治療装置で使用するX線などは電磁波の一種なので体に留まることはありません。
Q.放射線が当たると熱くなりますか?
A.実際に放射線が当たっても何も感じません。しかし、治療が進むと放射線による皮膚炎によって日焼けと似た症状が出る場合があります。
Q.どんな腫瘍に対して放射線治療を行っていますか。
A.当院ではほとんどのがんに対して放射線治療を行っています。
その内訳を以下に示します。
2024年 放射線治療件数の内訳(総治療件数433件)
| 原発部位別 | 照射部位別 |
| 高精度放射線治療として 体幹部定位照射 28件 脳定位照射 25件を含む |
おわりに
放射線治療部では、がん患者さんをあらゆる方面からサポートしたいと思っております。ご自分ががんになられた場合以外に、親族・友人ががんになった場合に気軽にミニ図書棚や放射線治療のビデオを見に来ていただきたいと思っております(すべて無料です)。
"すべては患者さんの利益のために"
この理念のもと、放射線治療部では、がん患者さんと向き合っていきたいと思っています。気軽に立ち読みするような感覚で訪れていただけるような空間をこれからも作っていきます。
我々は、患者さんと二人三脚で治療に向き合っていきたいと思います。
以下、装置の特設ページ
当院の放射線治療装置
当院ではBRAINLAB(ブレインラボ)社製のリニアックNovalis TxとAccuray(アキュレイ)社製のRadixact X9の2台体制で治療を行っています。
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《Radixact X9》 |
《Novalis Tx》 |
Novalis Tx
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2014年4月から高精度放射線治療装置Novalis Txによる治療を開始しました。
Novalis Txは2.5mmのコリメータ(放射線を照射する範囲を限定する多分割絞り)と精密な位置決めシステムにより、腫瘍だけに集中した放射線治療が可能で、短時間で痛みのない治療を実現します。
また、画像誘導放射線治療(IGRT)を用いた強度変調放射線治療(IMRT)や頭部・体幹部の定位放射線照射(SRS/SRT)が可能な放射線治療装置として、多くの施設に導入され高い評価を受けています。
そして2025年6月に導入したIMRT専用装置のRadixact X9は最大135cmのの治療を可能とし、当院はピンポイント照射から全身照射に至るまで幅広い高精度放射線治療を提供する体制を整えました。
強度変調放射線治療(IMRT)
- 治療効果が向上
- 副作用が軽減
強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)とは、高精度なコンピュータ制御により腫瘍に最適化されたビームを多方向から照射することで、正常組織の損傷を最小限に抑え腫瘍にのみ集中して放射線が照射できるため、高い治療効果と、副作用の軽減ができる治療法です。

下図は、前立腺の放射線治療の通常照射とIMRTによる線量分布の比較ですが、IMRTは通常照射と比較し正常臓器である直腸(茶色で囲われた範囲)の線量が低減されており、標的臓器である前立腺(黄色で囲われた範囲)に放射線が限局して照射されているのがわかります。

画像誘導放射線治療(IGRT)
画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy:IGRT)は、リニアック本体や治療室内に設置されたX線撮影装置等により、治療直前や治療中のX線画像を取得し理想の照射位置とのズレを検出し、治療台の位置を補正することで精密な位置合わせを行う技術です。
Novalis TxではExacTracX-rayとOBIの2種類のIGRTシステムを使用し、6軸の治療台が理想の照射位置まで自動で誘導し治療を行います。このIGRTを活用することで、IMRTや定位放射線照射などの高精度放射線治療をより効果的に行うことができます。
- X線画像、CT画像によるmm単位の精密位置合わせ
- 6軸ロボティックカウチによる治療台の自動位置補正

Radixact X9はCT装置(Clear-RTシステム)と体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)によるIGRTが備わっており、治療直前、治療中の体の位置情報を放射線を使わずに監視することが可能です。また、付属のCT装置により治療直前の腫瘍や体の位置情報を素速く正確に確認し、安全かつ確実に治療を行うことができます。
- kvヘリカルCTによる高画質かつ迅速な位置照合
- Catalystのプロジェクションによる患者体輪郭照合
- 体表面にカラーマップ投影することで、無駄な被曝を抑えた正確なポジショニングを支援
- オートポジショニング機能
検出したズレ量をベッドに送信することでボタン一つでセットアップ可能
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定位放射線照射(SRS/SRT)
定位放射線照射とは、腫瘍に対し一回の治療あたり大線量の放射線を3次元的に多方向からピンポイント照射する治療法で、一般的な放射線治療に比べ周囲の正常組織の損傷を最小限に抑えることが可能なため、大きな副作用がなく高い治療効果が期待できます
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《脳腫瘍の定位放射線照射》 |
肺がんや肝がんなどは呼吸による病巣の動きが大きくなるため、いかに動きを少なくしてピンポイントで放射線を当てられるかが治療効果を高め、副作用を抑えるポイントとなります。呼吸の動きによる放射線照射の対策には、呼吸停止、呼吸抑制、呼吸同期、動体追尾の4つの手法があります。呼吸停止は息を止めた状態で照射をします。呼吸抑制は自由呼吸下で行い、固定具等により動きを抑え込みます。呼吸同期では自由呼吸下における呼吸波形をモニタリングしデジタル信号として取得することで、ある一定の呼吸位相の時のみを狙い撃ちして放射線を照射します。
Synchronyの画像 |
動体追尾では、自由呼吸下での体内の位置認識用マーカーや病巣の動きを認識し、追従して照射を行います。
Radixact X9では動体追尾システムのSynchronyオプションを搭載しています。
呼吸停止、呼吸抑制、呼吸同期に加え、動体追尾による定位放射線治療も可能になりました。
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《脳腫瘍の定位放射線照射風景》 |
《肺がんの定位放射線照射風景》 |
SRS/SRTの適応は、各診療科と協議のうえ決定しています。
放射線治療における精度管理・品質管理
放射線治療では放射線治療計画装置によって照射する位置や範囲、照射線量を計算しています。その計算された放射線の量が正確にリニアックから照射されているかどうか、高精度線量計や水ファントム等を用いて週に一度、精密な線量測定を行っています。また、毎日の始業前にも簡易的に測定を行い、線量に変動が無いことを確認しています。
当院ではリニアックの治療ビームの総合的な品質管理として、年に1回3次元水ファントムを用いて治療ビームの特性に変動が無いかの確認を行っています。また、定期的に第三者的評価として医用原子力技術研究振興財団が行っている線量評価も受けています。
![]() 《毎週の線量測定》 |
![]() 《3次元水ファントムによる品質管理》 |
![]() 《第三者機関による測定実施証明書》 |




















