注射薬マッチングシステム
注射薬マッチングシステム
1.導入理由
患者さんへの注射薬の投与において,注射薬の調製時に,注射薬のラベル(以下,輸液ラベル)を認証することで最新の情報(変更あるいは中止)であるかを確認でき,配合する注射薬のバーコードを認証することで医薬品が正しいかを確認でき確実な注射薬を患者さんに投与できることを目的としている。また,輸液ラベルを認証すると,ハイリスク薬であればハイリスク薬とアナウンスし調製者に注意喚起できる。
2.利点
①最新の情報により確認調製でき,注射薬の破棄がないこと
②注射薬が間違いなく調製できること
③注射薬の投与順に表示されるため,進捗状況が確認できること
④ハイリスク薬が調製者に注意喚起できること
⑤注射薬に関連したインシデントが減少すること
3.欠点
①バーコードの認証作業が増えること
②マスターの管理があること(最新情報が毎月更新されるのであまり困難ではない)
4.注射薬マッチングシステムの操作手順
①当日の注射薬が投与順に表示される
画面の左側:赤の表示は投与時間が1時間以上過ぎているもの ピンクの表示は投与時間の遅延が1時間以内のもの 画面の右側:時間指定がないもの |
②輸液ラベルをバーコード認証すると調製する医薬品が一覧表示される。
注射薬のバーコードを認証した際の表示 白色:まだバーコード認証していない 青色:正しく認証された 黄色:数量が異なる(端数投与のため) 赤色:異なる医薬品,投与量オーバー等 |
③ハイリスク薬を含んだ輸液ラベルを認証すると下記のような画面表示され,ハイリスク薬とアナウンスされる。
④すべての注射薬の認証を完了すると注射薬一覧から削除される。
5.注射薬マッチングシステムの評価
①一般病棟2病棟と集中治療室の2ヶ月間の実績
5月 | 6月 | ||
---|---|---|---|
オーダー(施用)件数 | 時間指定無(TF) | 27,390 | 24,465 |
時間指定有 | 11,209 | 11,008 | |
合計 | 38,599 | 35,473 | |
マッチング(施用)件数 | 時間指定無(TF) | 5,276 | 4,341 |
時間指定有 | 1,092 | 1,340 | |
合計 | 6,368 | 5,681 | |
エラー件数 | 中止情報呼び出し | 72 | 75 |
投与量オーバー | 86 | 71 | |
薬品間違い | 65 | 51 | |
翌日オーダー呼び出し | 189 | 219 | |
前日オーダー呼び出し | 7 | 10 | |
合計 | 419 | 426 |
②主な読み間違い薬品の事例(バーコード認証で回避された事例)
元オーダー薬品情報 | 間違えて呼び出した薬品情報 |
---|---|
テルモ生食 100mL | 5% ブドウ糖注100mL(フソー) |
アセリオ静注液1000mgバッグ | |
ソルデム3A輸液200mL | |
ソルデム3A輸液500mL | |
ポタコールR輸液500mL | |
大塚生食注2ポ-ト100mL | |
大塚生食注 50mL | テルモ生食 100mL |
大塚生食注 500mL | |
生食注 20mL | |
プロポフォール注500㎎50mL<ディプリバン>(小児禁) | |
プレセデックス静注液 200μg | プロポフォール注500㎎50mL<ディプリバン>(小児禁) |
③安全面での看護師へのアンケート調査
NRSを用いて,「もっとも安全と考える状態」を10とした(図1)。看護師の自由記載(表1)
④業務負担での看護師へのアンケート調査
NRSを用いて、「増えた」を10、「減った」を0としてアンケート調査した(図2)看護師の自由記載(表2)
④結論
システムの導入は,注射薬のミキシングにおける調製ミスを防止でき,医療安全の面で有用であると考える。安全面で安心した業務が行えることは,スタッフの負担を軽減することに繋がると考える。また,変更や中止がミキシング前に確認できることで,廃棄薬剤を減量し,病院経営にも貢献できる。今後,マッチングの結果を解析の結果,医療安全の面での業務改善が可能となり,スタッフの負担軽減につながることを期待する。