病院長インタビュー(平成26年)

Q.「心にひびく医療の実践」を市民病院の理念として掲げていますが、どのような意味でしょうか?

この言葉はWHO(世界保健機構)が21世紀の健康の定義として「"Dynamic" & "Spiritual"」の追加を提唱したことが元となっています。
健康とは単に病気がないことだけでなく、人間の尊厳が保たれていたり、生活の質が確保されていることが重要です。
これらを参考に、20年後でも50年後でも世界中どこに行っても変わらない「Spiritual medicine」、すなわち「心にひびく医療」を病院の理念としました。

これは市民病院で働く全ての人に向けての言葉で「(それぞれの立場で)自分の心にひびく仕事をして下さい。」という意味です。
病院は医師、看護師、薬剤師等の医療職が働いているイメージですが、事務員はじめ、掃除や給食等の委託業者さんなど、患者さんの目に触れないところで様々な職種の人が働くことで病院が成り立っています。
「心にひびく医療の実践」というと事務員、委託業者等の裏方業務を行う人は「自分に関係ないのでは。」と思ってしまいますが、決してそのようなことはありません。

私が言うのは「医療」をそれぞれの仕事に置き換え、「心にひびく治療」「心にひびく看護」「心にひびく事務」など、人が見ていなくてもそれぞれの立場でプロフェッショナルな仕事をして、病院をもっと良くして下さいということです。

この基本方針は、毎年度の初めに3日間に分けて講演を行う中で、全職員に語りかけています。

Q.市民病院は平成19年度より黒字経営が続いており、平成26年度には総務省より「自治体立優良病院総務大臣表彰」を受賞しました。健全経営には様々な要因があるかと思いますが、どの点が一番の要因とお考えですか。

市民病院を含む保健医療機関は、保険診療の対価とし診療報酬を頂いていますが、この金額は厚生労働省が定めています。これは2年ごとに改定されていますが、平成18年度にマイナス約3%の改定が行われました。これは、患者さんに以前と同じ治療をしても病院が受け取るお金が約3%減ることを意味し、この時期多くの病院が赤字となり、当院も例外ではありませんでした。

他にもDPC(診断群分類包括評価)制度の導入など、病院の経営は医療制度に左右されやすい面があります。

そのため矛盾した言い方にはなりますが、一方で制度を追わない普遍的な理念「心にひびく医療の実践」を持ちつつ、もう一方では新しい制度に適切に対応していくことが重要と考え、将来を見据えた経営基盤強化のために経営企画部を新設しました。さらに地域中核病院としての役割を果たすため、救急災害医療、がん治療への対応、各分野の専門センターの新設、これらの診療を支える高度な医療機器の導入、これを支えるスタッフの育成等を行いました。

しかし自治体病院として、岐阜市の人員定数、予算枠に沿うように説明をすることも市民病院の代表の重要な仕事ですが、市長や市議会議員、市役所から理解を頂きながら、このような方針で進めております。

Q.開業医さんとの地域連携について積極的に進めていらっしゃるそうですが、詳しくお聞かせください。

地域連携とは、地域の開業医さんと病院が連携を深めあい、患者さんが安心かつ継続して病気の治療ができるようにする仕組みです。
私が副院長時代、これからは地域を支える病院になるのが市民病院の役割だと考え、平成14年に地域連携部を立ち上げ、初代部長に就任しました。

立ち上げ後、私と看護師、事務員等で開業医さんを廻りましたが、「市民病院に患者さんを紹介したのに返事がない。」とお恥ずかしい話を頂きました。

そのため、いつ、どの開業医さんから患者さんを紹介して頂いて、いつ返事を出したのかをExcelで一覧化しました。
今そのデータは何万件、十数年分溜まりましたが、定期的に確認し、返事を出していない診療科にはアラームを発しています。

また、患者さんの中には心配だということで、開業医さんに黙って市民病院を受診される方もいらっしゃいます。
そこで患者さんの目の前で開業医さんに電話をし、診察の結果を伝え処方のお願いをすることで患者さんも安心し、開業医さんとの連携が深まります。
これを繰り返すことで開業医さんと市民病院との信頼感が生まれます。これは本当に大切なことで、結局は患者さんにとっても開業医さん、市民病院にとっても、Win-Winの関係ができあがります。

このような努力を続けた結果、市民病院は岐阜県初の「地域医療支援病院」の承認を受けることができました。


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