肝・胆・膵センター
概要(平成29年4月開設)
当センターでは肝胆膵に関連した炎症性疾患や悪性腫瘍などを扱っています。より専門的な医療技術が必要となることが多い、肝胆膵疾患に対して消化器内科(肝臓内科、胆膵内科)と消化器外科が密に連携して診断、治療、その後のフォローアップをしております。
肝臓内科、胆膵内科、放射線科からなる多職種合同の肝胆膵カンファランスにより、患者さんにとって、より安全で、ベストとなる方針決定をしております。
肝胆膵がんドック受診者への結果説明、方針決定をしております
医療機関の皆様へ
内科か外科かどちらに紹介したらいいか迷う場合、肝疾患か胆膵疾患かがわからない場合など、肝胆膵に関する疾患であれば是非当センターへご紹介ください。
肝胆膵センター長 林 秀樹
スタッフ紹介
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肝臓内科より
当センターで扱う代表的な肝疾患としては肝細胞癌があります。肝細胞癌はかつてそのほとんどが肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス)によるものでしたが、近年は肝炎ウイルス以外が原因の肝細胞癌が増加傾向にあります。特に、最近は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から肝細胞癌が多く発見されるようになっています。脂肪肝は肥満や糖尿病といったメタボリック症候群に関連して認められることが多いありふれた疾患であり、肝細胞癌ができてもほとんど自覚症状がでることはありません。そのため大きく成長した状態で発見されることも少なくない疾患です。
肝細胞癌の内科的治療の中心は経皮的ラジオ波凝固療法(RFA)です。患者さんへの負担は少なく、通常は治療後数日で退院可能となります。肝細胞癌の状態によっては、肝動脈塞栓術や定位放射線治療、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを用いた薬物療法なども積極的に行っております。肝動脈塞栓術は肝細胞癌の栄養血管を径カテーテル的に塞栓させることにより腫瘍を壊死させる治療法です。最近はカテーテルを橈骨動脈から挿入ことにより、患者さんの負担をより減らす方法で治療を行っています。放射線治療は、高齢者でも選択可能な治療法です。放射線治療専門医と連携して肝腫瘍の状態に応じた治療計画を行い、必要に応じて金マーカー留置も併用して、治療精度を高める工夫もしています。薬物療法は、近年、さまざまな新しい薬物が使用可能となり、その治療成績は年々、向上しています。
多々ある肝細胞癌の治療法の中から、患者さんや肝細胞癌の状態にあわせて、最適な治療法を選択し、ベストな治療効果が得られるよう日々努力しています。
胆膵内科より
当科には胆道および膵臓の専門医が複数名在籍しており、内視鏡・超音波内視鏡を用いた診断・各種治療、悪性腫瘍に対する薬物治療・遺伝子診療などを行なっています。
1. 胆膵超音波内視鏡
I. 胆膵領域の悪性腫瘍の早期診断のため、非常に重要な検査と位置付けております。また、胆管結石の診断にも有用であり、不要なERCPを回避するために重要な検査です。
木曜日以外は毎日検査枠を設けております。主にミダゾラムを用いて鎮静下に検査を行います。
2. 超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA)
I. 膵腫瘍を中心に、胸腔内・腹腔内のリンパ節、消化管粘膜下腫瘍、胆嚢・胆管腫瘍などを穿刺対象としております。
II. 穿刺針の進化に伴いFNAの診断能力が向上していますが、最近の組織採取能力の向上した穿刺針によって、遺伝子診断の成績も向上しています
入院で検査を行なっています。検査翌日の退院が基本になっています。
3. 超音波内視鏡下治療
I. EUS下胆道ドレナージ
II. 膵嚢胞・膵被包化壊死ドレナージ
III. そのほかのEUS下ドレナージ
以前は経皮的治療が多かった分野ですが、最近ではこれらEUS下の経消化管的治療が主流になりつつあり、患者様のQOL改善に大きく貢献しています。
4. ERCP
I. 胆管結石治療・・通常の採石に加えて、巨大結石や術後再建腸管などの採石困難症例に対して、小腸内視鏡下の採石、細径スコープ(経口胆道鏡)を用いた直接破砕術、EUS下順行性治療などを行なっております。
II. 膵石・膵管狭窄・・内視鏡的採石、ESWL、膵管ステント留置を中心に行なっています。また、当院の倫理委員会の承認のもと、膵管鏡下の膵石直接破砕術も取り入れています。
III. 腫瘍診断・・精度を高めたマッピング胆管生検、胆道鏡を用いた直接観察、ドレナージチューブを留置した連続胆汁・膵液細胞診を行なっています。
IV. ドレナージ・・プラスチック・メタルステントを使い分け、胆管、胆嚢、膵管、膵嚢胞へのステント留置を行なっております。最近では容易に交換可能なプラスチックステントの有用性が見直されています。
5. 癌治療
I. ガイドラインに記載されている化学療法を中心に行なっております。
II. 当院では遺伝子診断を用いた個別化治療に積極的に取り組んでおり、胆膵領域においても、常に遺伝診断のタイミングを考えながら診療を行なっております。
消化器外科より
当センターでの消化器外科部門は、岐阜県内にて3施設しかない肝胆膵高度技能専門医が在籍し、手術を行っている施設です。
肝胆膵疾患における手術は、高難度かつ高侵襲手術が多いため、外科医の技術のみならず、肝胆膵内科医・放射線読影医・病理診断医による正確かつ緻密な診断や十分に訓練された看護スタッフ・リハビリテーションスタッフ等によるチームワークが非常に重要と考えています。当センターでは、患者さんを中心にした、良好かつ洗練されたチームワークのもと安全な手術が行われています。
当センター外科では、膵頭十二指腸切除などの肝胆膵高難易度手術を年間50例近く行っており、ハイボリュームセンターとしても機能しています。また、高難易度の手術のみならず、胆石症や胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術も年間150例以上と数多く行っており、良性疾患から悪性腫瘍まで幅広い肝胆膵手術に対応しております。
手術に関しては、安全性を第一に考えつつ、腹腔鏡を用いた肝切除や膵切除も行っており、病態に応じた低侵襲手術も行っております。
また、術後に関しましても、経過観察・再発時の化学療法の施行を地域の医療機関と綿密な連携を取りつつ行っております。当院は救急病院・総合病院でもあるため、肝胆膵手術を受けられた患者さんの他の疾患、救急治療も行うことが可能です。
当センターは、肝胆膵疾患かどうか迷う症状のある患者さん、胆嚢炎などの救急疾患、膵がんや肝臓がんなどの高度な医療を必要とする患者さんまで幅広く対応可能ですので是非お気軽にご紹介ください。