概要
滲出性中耳炎、慢性化膿性穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎、急性感音難聴、突発性難聴、めまい・平衡障害、顔面神経麻痺、鼻アレルギー、鼻出血、併合性副鼻腔炎、乾酪性副鼻腔炎、顔面多発骨折、眼窩ふきぬけ骨折、慢性扁桃炎、習慣性扁桃炎、病巣扁桃、アデノイド増殖症、反回神経麻痺、耳下腺、甲状腺、副甲状腺などの良性腫瘍性疾患から嚥下障害、睡眠時無呼吸症候群に至るまで、耳鼻いんこう科・頭頸部外科全般の検査・診断・治療を行っています。地域連携病院であり、がん拠点病院でもあるという性格上、唾液腺、甲状腺・副甲状腺腫瘍などの悪性腫瘍、喉頭がん、咽頭がん、鼻副鼻腔がん、原発不明がん、頸部リンパ節転移、悪性リンパ腫などに対しての集学的治療にも重点をおいて血液内科、腫瘍内科とも連携しています。また高次救命センターを有する病院ではありませんが、2次から3次救急に該当するような救急患者さんも多数受診され、救急部を受診された患者さんや一般耳鼻咽喉科診療所からの救急患者さん、あるいは院内での気道緊急を要する患者さん、待機的気道確保患者さんに対して耳鼻咽喉科としてのバックアップを行っています。
スタッフ紹介
|
|
|
診療内容と実績
耳鼻いんこう科・頭頸部外科では次のような疾患を対象にしています。
中耳炎、めまい、難聴、顔面神経麻痺、副鼻腔炎、扁桃炎、唾石症、睡眠時無呼吸症候群、音声障害、嚥下障害、頭頸部腫瘍(鼻副鼻腔がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、副甲状腺腫瘍、耳下腺・顎下腺腫瘍など)
診療体制
外来初診・再診診療は月・火・木の午前中です。受付は午前11時までです。水・金は手術日で原則初診のみ行っています。また予約制で組織生検・細胞診、ABR聴性脳幹反応、ENoG顔面神経麻痺検査、嚥下外来などの専門外来を行っています。
入院対象は良性・悪性疾患の手術治療が中心ですが、他に、めまい、突発性難聴、顔面神経麻痺、顔面外傷、深頚部膿瘍などの炎症性疾患の点滴・処置治療をおこなう患者さんなども対象です。
当科での手術麻酔は、幼小児の鼓膜チューブ留置術、口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術、内視鏡下鼻副鼻腔手術、耳科手術、頭頸部腫瘍手術を含めほとんどが全身麻酔下手術を行っています。悪性リンパ腫など血液疾患が疑われる頸部リンパ節生検のような小手術は日帰り局所麻酔手術を手術室で行う場合があります。
耳鼻いんこう科領域
眩暈・平衡障害
眩暈・平衡障害例ではメニエール病、良性発作性頭位性眩暈、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴などの内耳性めまいの治療を行います。赤外線CCDカメラを使用した眼振検査をとりいれています。
小脳梗塞、ワレンベルグ症候群、椎骨脳底動脈循環不全などの中枢性眩暈との鑑別は特に重要で、予約で先になることが多いMRI検査なども、緊急性があれば入院のうえ放射線科スタッフの協力で早急に診断を確定し末梢性か中枢性かの診断をつけることを最重要ポイントとして治療を行っています。
平衡機能検査などによる機能検査、MRI、CTによる画像検査などにより病巣診断を行い良性発作性頭位性眩暈など症例によりめまいのリハビリを指導しています。めまいの原因はきわめて複雑で多岐にわたり、必要があれば脳神経外科、循環器内科、脳神経内科、整形外科、精神科と連携をとり治療にあたります。鼓膜換気チューブ留置術などの治療は時に行うことがあります。
急性感音難聴・顔面神経麻痺
急性感音難聴や顔面神経麻痺は治療抵抗性の難治例での開業医の先生方からのご紹介が多いです。プロスタグランディンの点滴投与や糖尿病を合併している例ではインスリンを併用したステロイド投与を積極的に行い、症例によってはステロイドの鼓室内投与を行う場合もあります。高気圧酸素投与治療は標準的初回治療とは認知されていませんので当院ではおこなっておりません。
難聴
新生児聴覚スクリーニング精密検査機関に日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から施設認定されています。新生児で難聴検査でリファーが出たときにはABRを行い岐阜市の難聴児通園施設みやこ園と連携し、難聴児の療育にも協力をしています。
鼻アレルギー
鼻アレルギーでは内服治療や舌下免疫療法、手術治療としての下甲介粘膜のレーザー手術、粘膜下下甲骨切除術、下甲介切除術、後鼻神経切断術などの手術を症例に応じて行います。レーザー手術を除いては当院では患者さんのご希望もありほぼ全例、鼻・副鼻腔手術は全身麻酔下に行います。
副鼻腔疾患
副鼻腔疾患では低侵襲で効果的な治療をめざし、内視鏡下手術を積極的にとりいれています。難治性鼻出血でも内視鏡検査を導入し、出血部位の確認、確実な止血処置を行います。鼻・副鼻腔手術のような対象が良性で鼻閉や鼻汁などの症状改善、機能の回復を目的に行われる手術でも眼や頭蓋内に合併症が起こることはあまり知られていません。しかし日本でも年に少なからず、その報告が現在でもなされています。
当科では最新のナビゲーションシステムを導入し、手術による副損傷をできるだけ起こさないように細心の注意を払って治療を行っています。慢性副鼻腔炎、鼻副鼻腔腫瘍などが対象になります。
近年は、難病指定の好酸球性副鼻腔炎の患者さんが増加しています。手術治療だけでは治癒が困難な患者さんには、これまで喘息やアトピー性皮膚炎で使用されてきたデュピルマブ 300mgを2週間隔で皮下投与する治療も行っています。注射により難治と言われてきた症状が緩和する状態にまで改善する場合があります。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
| 好酸球性副鼻腔炎CT所見 |
扁桃・アデノイド手術
扁桃・アデノイド手術では市中病院の性格上岐阜市内での症例数は多いです。習慣的に扁桃炎を繰り返されたり、IgA腎症、掌蹠膿疱症などの病巣感染症の患者さんに対して治療を行います。
小児睡眠時無呼吸症候群症例
小児睡眠時無呼吸症候群症例は5歳以下でも積極的に手術を行います。小児の患者さんは小児病棟への入院が原則です。
![]() |
|
| デビスクロー開口器による扁桃所見 |
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者さんではまずは自宅での簡易検査をスクリーニング検査を受けていただきます。同時にホルター心電図(24時間)検査や心臓超音波検査などの諸検査も受けていただきます。簡易検査で睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合には入院の上ポリソムノグラフィー検査を行い、診断を確定します。
検査結果を分析し後日外来で説明し、鼻マスク持続用圧呼吸(CPAP)による治療が適応であればCPAP治療を導入し治療効果をみます。導入が困難な場合は、手術治療の併用(口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)やマウスピース(スリープスプリント)などの適応については歯科と相談し治療を行っていきます。
嚥下障害
うまく食物を飲み込むことができず、時に食事や唾液が気道に入る誤嚥を起こすことを嚥下障害といいます。さまざまな神経や筋の障害などで嚥下障害がおこりますが、嚥下に関わる機能の一部を手術的に補助することで誤嚥なく食事ができる場合があります(嚥下機能改善手術)。さらに高度な障害で誤嚥による肺炎を繰り返すような場合には、気道を閉鎖する手術で誤嚥を完全に防止します(誤嚥防止術)。嚥下のリハビリも含めて、これらの手術の適応や選択について嚥下透視や内視鏡嚥下機能検査などで決定しています。
繰り返す誤嚥性肺炎などによって主治医から口から食べることを禁止されることがあります。なんらかの理由で禁食のままになっていることや、急性期病院に入院中に禁食と決められたことが退院後も継続されていることがあります。食べ物を誤嚥して肺炎になる可能性を考え、とりあえず禁食とされていることが多いのではないかと思います。ご本人に「口から食べたい」という意志がある、現在、自宅や入所施設で生活している、病気が安定している方はぜひ一度現在の嚥下機能を見定めるため来院ください。
病気によって気管切開術を受け、長期間気管カニューレによる呼吸管理が行われている方も多くいらっしゃいます。その中でも誤嚥性肺炎を繰り返される場合は、誤嚥防止術の一つである声門閉鎖術を行うことで、誤嚥による肺炎を完全に防止する、カフ付き気管カニューレから離脱する、可能な限り経口摂取の楽しみを享受する、などの大きなメリットを得ることができます。
![]() |
|
| 輪状咽頭筋切除・喉頭挙上 |
![]() |
|
| 声門閉鎖術後 |
頭頸部外科領域
甲状腺腫瘍、副甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍、咽喉頭腫瘍
甲状腺腫瘍、副甲状腺腫瘍、耳下腺腫瘍では神経刺激器を使用し、極力反回神経や顔面神経の障害を起こさないよう努めています。悪性腫瘍では神経の再建も行います。甲状腺がんでの転移再発予防目的の補完全摘術、アブレーション治療は日本では、議論の余地も多く、患者さんのQOLを考え、乳頭がんのハイリスク群にはおすすめする場合があります。当院ではおこなっておりませんので、甲状腺がんの遠隔転移に対しての放射線ヨード内用療法は岐阜大学の放射線科などに治療を依頼する場合があります。
音声障害に対する手術として声帯ポリープ切除などの喉頭顕微鏡下手術を行っています(ラリンゴマイクロサージャリー)。口から入れた電気メスやレーザーで鏡視下に経口的に腫瘍を切除する方法も積極的にとりいれ治療の選択肢を増やしています(TOVS)。
| ラリンゴマイクロサージャリー |
![]() |
|
![]() |
|
| TOVS時の下咽頭所見 |
頭頸部悪性腫瘍(喉頭癌、咽頭癌など)の治療では機能保存に努めた治療を行い、病気の進行に合わせて、放射線療法、化学療法、手術を組み合わせた集学的治療を行っています。それぞれの患者さんの社会的背景や希望を考慮して治療方法を選択し、放射線治療科、形成外科、緩和ケアチーム、NSTチームとの連携をもとに治療を進めていきます。特に化学放射線療法を積極的に取り入れ手術侵襲を最小限にするよう努力しています。近年では鏡視下の喉頭、下咽頭悪性腫瘍切除をすることで喉頭機能の温存が得られる患者さんもお見えになります。腎機能障害などで白金製剤併用療法の行えない患者さんの分子標的薬セツキシマブの導入や高齢者のTS-1の内服併用の放射線治療で寛解する症例も増えてきました。また免疫チェックポイント阻害薬を使用される場合も増えてきました。やむを得ず、喉頭全摘出術にいたった患者さんには代用音声の獲得のため、人工喉頭など音声のリハビリをおこなっています。
岐阜市は県下の他の市とくらべ がん診療拠点病院が3つあるという稀有な医療環境にあります。
頭頸部がん診療においても、きめの細かい治療を行うことを考えています。しかしがん治療には、さまざまな誤った情報、自費診療での非標準的なエビデンスのない治療をすすめられる残念なケースも増えています。がん治療難民にならないように、自己防衛し専門家の意見を参考にされることも必要と思います。
医療設備
MRI、CT、超音波、リニアック(定位照射)、電子スコープ、半導体、炭酸ガスレーザー、AABR、CUSA、ハーモニックスカルペルなど。


















