乳腺外科
概要
乳腺に関する診療を行っています。
乳がん以外にも乳腺の良性疾患(のう胞、良性の腫瘍、乳頭からの分泌物など)、乳がん検診で要精査とされた方も多く受診されています。
乳がん検診の要精査で受診された方
乳がん検診の2次検診を行います。2次検診はマンモグラフィ(乳房をはさんでレントゲン写真を撮影する検査)と乳腺エコー(超音波)検査(超音波で乳房の断面を見る検査 乳房をはさまないので痛みはありません)を再度行います。マンモグラフィを持参して頂ければ乳腺エコー検査のみ行うこともあります。マンモグラフィと乳腺エコー検査で疑わしい部分があれば、追加で検査を行います。乳がん検診の結果を持参してください。
乳腺に気になるものを触れて受診された方
同様にマンモグラフィと乳腺エコーで検査を行います。疑わしい部分があれば追加で検査を行います。
乳がんは自己検診で発見することが可能です。
早期(大きさが長径2cm以内)に発見できれば完治する可能性が高いため、御自分で何か気になる物を触れる際には乳腺外科を受診してください。2cmを超える大きさでも、薬や放射線、手術を組み合わせて治療している方が多くみえます。
また乳頭から液体が出てくる(特に黒色~濃い茶色)、治りの悪い乳頭乳輪のびらん(かぶれ)も乳腺外科を受診してください。
御高齢の方、病気で通院中の方も他の診療科と連携して治療を行っています。いずれの場合も現在の病状や御本人の意向を考慮し、相談の上で治療方針を決定しています。
かかりつけの医療機関(何科でも結構です)で紹介状を書いてもらってから受診して頂けると、優先して診察を受けることができます。
スタッフ紹介
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マンモグラフィ検査
マンモグラフィ検査装置(トモシンセシス)を導入しました (富士フィルムメディカル社製AMULET Innovality FDR MS-3500)
マンモグラフィは乳房を2枚の板で挟んで平らにのばした上でレントゲン写真を撮影する検査です。2018年11月26日から新しい装置での検査を開始しました。
新しいマンモグラフィ検査装置は次の3点で改良されています。
①放射線量が少ない
従来の装置より画質が向上し、さらに放射線量を減らした検査が可能となりました。
②乳腺の断層撮影(トモシンセシス)が可能
従来の装置は乳腺が多い場合(高濃度乳腺)には乳腺に腫瘍が隠れて診断が難しいことがあります。マンモグラフィでは乳腺も腫瘍も白く映ります。従来のマンモグラフィでは2つが重なるため判りにくいことがあります。
新しい装置は従来のマンモグラフィと同時に乳腺の断層写真(トモシンセシス)で乳腺の内部構造を断層写真で細かく分解して見ることができるので、より詳しく検査ができます。
例として
・従来のマンモグラフィ 一人で雪の中(乳腺)に隠れている白うさぎ(病変)を探しましょう
・新しいマンモグラフィ 大勢で(トモシンセシス)白うさぎを探しましょう。
③マンモグラフィで組織検査ができる
マンモグラフィ検査のみで発見された、触っても判らない腫瘍(極早期の乳がんが疑われる石灰化)の組織検査ができます。トモシンセシスを使って検査を行います。(ステレオガイド マンモトーム検査)
当院の乳房撮影検査は女性の診療放射線技師が撮影を担当しています。また乳腺エコー検査も女性の検査技師が検査を担当しています。
乳がんの発症リスク
乳がんの見つかる方は40歳代後半にピークがあります。乳がんは、女性ホルモン(エストロゲン)が関係しているがんで、初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅い、または高齢で未産など、女性ホルモンにさらされる期間が長いことが乳がんのリスク(危険因子)とされています。
閉経後の女性は肥満、高脂肪食も乳がんのリスクです。女性ホルモンは皮下脂肪や内臓脂肪でも作られているからです。もともと欧米に多かった乳がんが日本で増えているのは、食生活の欧米化(高脂肪食)が、大きく影響しているからだと考えられています。
閉経前 | 閉経後 | |
---|---|---|
リスク増加 | アルコール 喫煙 | アルコール 喫煙 肥満 成人になってからの体重増加 |
リスク減少 | 出産 授乳 初産年齢が早い | 散歩などの運動 出産 授乳 初産年齢が早い |
適度な身体活動(運動)は乳がんのリスクのみではなく、生活習慣病の改善も期待されます。まず散歩をしてみるなどで十分です。できる範囲で行ってみましょう。
乳がんと遺伝
本当の意味での遺伝性の乳がん(乳がんにかかりやすい特定の遺伝子が親から子へ引き継がれる)は5~10%と言われています。特に血のつながった家族や親戚に卵巣がん、乳がんにかかった人が複数いる場合には注意が必要です。家族や親戚にがんの人が多い場合は、30歳頃から自分の乳房に注意して、乳腺エコーなどで乳がん検診を積極的にうけておいた方が良いでしょう。職場の検診、住民健診も早期発見にもつながります。
乳がんに関して更に詳しく知りたい方は下記のホームページを御参照ください。
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」は、3年毎に日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン委員会が掲載内容の更新を行い、その内容を日本乳癌学会理事会が承認し一般公開となっています。冊子でも販売されています。
当科の診療成績
手術件数
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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乳管腺葉区域切除術 | 0件 | 2件 | 1件 |
乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術)(腋窩鎖骨下部郭清を伴う)(胸筋切除を併施しない) | 14件 | 17件 | 19件 |
乳腺悪性腫瘍手術 2.乳房切除術 腋窩郭清を伴わないもの | 25件 | 31件 | 28件 |
乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除)(腋窩部郭清を伴う) | 4件 | 7件 | 2件 |
乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除)(腋窩部郭清を伴わない) | 33件 | 40件 | 42件 |
乳房切除術(乳腺良性病変) | 0件 | 1件 | 2件 |
乳腺腫瘍摘出術 (乳腺良性病変) | 13件 | 12件 | 13件 |
センチネルリンパ節生検(乳腺悪性腫瘍手術と併施も含む) | 60件 | 71件 | 67件 |
乳房再建術(人工物、自家組織) | 0件 | 0件 | 0件 |
乳腺エコー、マンモグラフィ件数
病理組織検査件数
岐阜市民病院乳腺外科 乳がん診断後の生存率(2012年〜2020年診断症例)
3年生存率 | 5年生存率 | 8年生存率 | |
---|---|---|---|
stage0 | 100% | 100% | 100% |
stage1 | 97% | 95% | 92% |
stage2 | 98% | 93% | 83% |
stage3 | 88% | 81% | 61% |
stage4 | 62% | 49% | 39% |
Kaplan-Meier method
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