トピックス2 腹壁ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニア
当院では2025年6月より新しい修復手術(鏡視下腹膜外修復)を取り入れ、適切な時期に積極的に手術を行っております。
腹壁ヘルニアとは?
鼠径部以外の部分で、お腹の壁の弱くなった部分から腸や脂肪が飛び出して皮膚の下に潜り込んでふくらむヘルニアです。最も多いのは、過去におなかの手術をされたかたの傷あとの弱くなった部分がふくらむ「腹壁瘢痕(はんこん)ヘルニア」です。
そして手術をしていなくても自然とおなかの壁の弱い部分から腸や脂肪が飛び出してふくらむヘルニアもあり、代表的なのはへそ部分の「臍(さい)ヘルニア」です。生まれつきある場合や、大人になってから現れる場合もあります。
腹壁の構造と腹壁ヘルニア
一般的にトレーニングで鍛える「腹筋」は医学用語では「腹直筋(ふくちょくきん)」と呼ばれ、左右にあります。左右の腹直筋は「腹直筋鞘(ふくちょくきんしょう)」と呼ばれる鞘(さや)にそれぞれ包まれており、筋肉の前方の鞘を「前鞘(ぜんしょう)」、後方の鞘を「後鞘(こうしょう)」と呼びます。左右の腹直筋は筋鞘に包まれて連続しており、ちょうど真ん中のつながり部分を「白線(はくせん)」と呼びます。臍ヘルニアも腹壁瘢痕ヘルニアも、この腹壁の構造の弱くなった部分から腹膜に包まれて腸管や脂肪が飛び出します。
どんな方かヘルニアになりやすい?
やはり、おなかに持続的に圧がかかりやすい場合が多いです。重いものを持ち運ぶ仕事や、腹圧がかかる運動、肥満体型や喘息、糖尿病や喫煙者なども起こりやすいとされます。
どんな症状か?
ふくらみ部分に「痛み」や「違和感」を感じることがあります。痛みはないものの、おなかが不自然に膨らむため「見た目が気になる」という患者さんも多いです。症状がひどくなると生活に支障をきたします。ヘルニアが腸閉塞の原因となることもあります。腸管が飛び出して戻らなくなる(嵌頓:かんとん)と「激痛」を感じることもあります。
もし嵌頓したら?
鼠径部ヘルニアと同様に「耐え難い痛み」が出現しますので、すぐに医療機関を受診してください。数時間以内の早期であれば、医師の圧迫手技(徒手整復)によって腸管をおなかの中に戻せる可能性があります。もし戻せない場合には緊急手術となり、腸が壊死(えし:腐ること)していれば切除する場合があります。
治療は?
薬で治ることはありません。完全に治すためには、基本的には手術が必要です。
必ず手術が必要なわけではありません
鼠径部ヘルニアと同様で痛みなどの症状がない場合には経過を見ることは可能です。しかし、痛みが出現したり、ヘルニアが徐々に大きくなったりする場合には手術をお勧めします。一度でも腸管の嵌頓を経験する場合には、特に手術が推奨されます。
ただし、鼠径部ヘルニアと比較して、ヘルニアが大きくなりすぎてからの手術はとても大変になりますので、大きくなる傾向があれば手術を提案いたします。
どんな手術か?
ヘルニア門の大きさや体型によって手術方法を選択しています。
単純縫合閉鎖
ヘルニア門が小さければ、単純に穴を縫い閉じる手術を行います。もし再発した場合にはメッシュを使用します。
腹腔内修復法
おなかの中に専用のメッシュを挿入して穴を塞ぎ、ずれないように糸や固定具で腹壁と固定します(IPOM法:アイポム)。ヘルニアの大きさによって大きなキズの開腹手術と、小さなキズの腹腔鏡下手術があります。従来はこの方法を標準として行っていました。現在は、以下のE-MILOS、eTEPで対応できない複雑なヘルニアや修復の困難が予想されるヘルニアに対してIPOM法を行っています。
腹膜外修復法
新たに導入した手術方法で、MILOS(ミロス)、E-MILOS(イーミロス)、eTEP(イーテップ)という方法を用いています。MILOSは小さなヘルニアに、E-MILOSは内視鏡を用いて6㎝のキズで標準サイズのヘルニアに、eTEPは内視鏡を用いて大きなヘルニアに対して行っています。IPOM法との違いは、腹腔内にメッシュを挿入せず、腹直筋後腔(こうくう)という腹膜より外のスペースにメッシュを設置することです。腹腔内にメッシュを設置しないため腸管の癒着や、腹壁に固定することによる痛みが減少するとされます。
最近のトピックス
手術の中でも特に鏡視下腹膜外修復法(E-MILOS・eTEP)は2018年以降に日本に導入された新しい手術方法です。最近はメッシュを腹腔内ではなく、腹膜外のスペース、特に腹直筋後腔に設置するのが良いとされています。
当院では2025年6月より開始し安全に行っています。当院が岐阜県内では初の導入と思います。ご希望の方はぜひ当院「おなかのヘルニア外来」へ相談してください。
どの手術方法が良いのか?
鏡視下腹膜外修復法を中心に行っていますが、患者さんの体型やヘルニア門の大きさによって、従来の腹腔内修復法(IPOM法)も行っています。患者さんの個々の状況に応じて適切な方法を提案しています。
おなかのヘルニア外来からのメッセージ
特に腹壁瘢痕ヘルニアはおなかの中で腸が癒着している場合が多く、手術によって意図せず腸を傷つけてしまうリスクがあります。そのため、傷あとがふくらんでいるという「見た目」を改善するだけのために手術を行うことはこれまで推奨してきませんでした。しかし、その「見た目」が原因で例えば温泉に行けないなどお困りの患者さんもおられ、「見た目」も生活に支障をきたす立派な症状と考えます。
当院では「鏡視下腹膜外修復法」を導入し「腹壁ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニア」の修復を積極的に行っております。腹痛や腸閉塞などの症状がある場合にはもちろんですが、たとえ症状がなくともヘルニアが徐々に大きくなってくる場合には、大きくなりすぎる前に手術をお勧めしています。当院で対応が困難の場合には適切な国内の医療機関への紹介も可能です。お困りの患者さんはぜひ一度、当院おなかのヘルニア外来へ相談ください。

















